空白期(無印〜A's)
第二十四話 (蔵元家、幼馴染、男友人、担任)
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蔵元翔太の父親である蔵元宗太の朝は、おそらく大多数の父親の起床平均時間と比べると普通より若干遅い程度のものだろう。いつものように昔ながらのジリジリと鳴る目覚まし時計によって起こされ、ポンと目覚まし時計の頭を叩いて、主が目覚めるまで延々とベルを鳴らす働き者を停める。
このまま横になっていれば、もう一度、夢の世界へと旅立つであろうことは容易に想像でき、一家を支えるものとして、それはできぬといつものように上体を起こし、キョロキョロと周囲を見渡した。残念ながら、この部屋で寝ているのは自分ひとりだけだ。おはようと挨拶しても返してくれる妻も子どももこの部屋にはいなかった。
数年ほど前までは、宗太は、妻と子どもの翔太と、翔太が一人部屋を欲しがるようになってからは、妻と一緒に寝ていたのだが、一ヶ月ほど前から、宗太は自分ひとりで寝ることになっていた。
その原因は、息子の翔太が拾ってきた(?)子ども―――宗太にとっては娘になるアリシアである。彼女が妻と翔太と寝ることを望んだため、宗太は一人で侘しく寝る羽目になってしまった。いや、正確にはアリシアが直接の原因であるとはいえない。直接の原因は、むしろ、アリシアと一緒に寝ることを望んだ彼女のペット―――これまた疑問系なのだが―――のアルフという女性だ。
もしも、アルフがアリシアのような子どものような容姿をしていたならおそらく彼は、妻や息子と一緒の部屋で寝起きしていただろう。だが、彼女の容姿は、どうみても二十歳前後の女性にしか見えず、しかも、女性的な魅力に溢れているといってもいい。さらに、宗太を困惑させるのが、彼女の普段着―――タンクトップと短いジーパン―――だ。まるで、彼女の魅力を見せ付けるかのような服装。そして、何より見過ごせないのが、彼女の頭に生えている犬耳とお尻から生えている尻尾だろう。
まあ、なんというか、彼がまだ学生だった頃、そういう類の十八歳未満お断りの漫画を集めたこともあるし、こっそりとヘアバンドを隠し持っているなんてこともある。
つまるところ、アルフの豊かな胸やショートパンツから見せ付けるようなムチムチの太ももと彼の隠している趣味を刺激するような犬耳と尻尾という大学院を卒業し、就職してから結婚、子どもと順調な人生を歩み、三十台半ばという男性にとって、いつ理性が切れるか分からない状況において、野獣の前に餌をおくことはできない、という理由から宗太は一人寝ることを余儀なくされた。
「……起きるか」
一人で寝ていることについて考えることの虚しさを悟って宗太は、布団から起き上がって、着替えるためにパジャマの第一ボタンに手をかけた。
会社勤めとはいえ、しょせん男である。化粧も何も必要ない宗太は、顔を洗って、髪をセットして、ひげをそって、リビングへと
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