空白期(無印〜A's)
第二十四話 (蔵元家、幼馴染、男友人、担任)
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が疲れて逃げられなくなるか、あるいは―――
「こっちっ!」
第三者の介入である。
逃げ惑う桃香と夏希からしてみれば、それは地獄に垂らされた蜘蛛の糸のようなもので、藁にも縋る思いで、彼女達は介入してきた第三者に手を伸ばした。もっとも、それは今まで公園をグルグル逃げ回っていたのを進路を変えて、第三者の背中に隠れただけだが。
背中に隠れた桃香と夏希を庇うように前に立ったのは、救いの手を伸ばした第三者。その背中を見ながら、桃香は、物語の中でしか見られないヒーローを思い出していた。
そんなヒーローこと蔵元翔太との出会いから五年余り。公園で、犬から救われてから、何かあるたびに彼女は彼女のヒーローである翔太に頼る事が多くなっていた。それを友人の夏希はいい顔をしなかったが。近所に住んでいて、気が弱く、すこしとろいところがある桃香を守ってきた自覚が彼女にあったからなのだが、鈍感な桃香はそれに気づくことはなかった。
そんな彼女達も小学三年生になっていた。
「しかし、桃も料理上手になったよね」
「そう……かな?」
桃と呼ぶ親友の夏希に応えながら、桃香は首をかしげる。確かに最初に比べれば、上手になっているだろう。最初に作ったときは、形も上手に作る事ができず、砂糖の量も多すぎる、焼き加減は無茶苦茶で、お世辞にも上手とはいえなかった。それを翔太に食べさせ、あまつさえ、褒めてくれるものだと思っていたのだから度し難い。もっとも、彼はわからないように婉曲的に言ってくれたが。
しかしながら、残念ながら、もう一人の幼馴染は、遠慮することなく「まずい」と口にしたため、桃香の心を抉り、思わず半泣きになってしまい、夏希に懲罰的な意味で鉄拳を喰らっていた。あの時は、申し訳ないことをしてしまったと思っている。
「まったく、ショウもバニングスや月村さんなんかじゃなくて、あたしたちと一緒に食べれば、桃のおいしいお弁当がもらえるのに」
納得いかない、というような表情で、夏希が言う。おそらく、夏希はもう数少ない同じクラスの保育園時代からの友人として一緒に食べに来ないのが不満で仕方ないのだろう。しかも、今、一緒に食べているのが夏希とあまり仲のよくないアリサ・バニングスなのだから仕方ない。
気性で言えば、夏希もアリサも烈火と言っていいだろう。火と火がぶつかれば、炎になる。つまり、激しくなるのだ。よって、夏希とアリサの仲はよろしくない。その切っ掛けは、翔太が持っていたのだから因果なものだ。
あれは小学校一年生の頃、アリサと仲良くして欲しいと頼まれた夏希が翔太の言うことだから、と仕方なく話しかけたところ、アリサに袖にされたときからその因果は始まっているのだから。もっとも、桃香が考えるにそれだけではなく、翔太が、クラスメ
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