空白期(無印〜A's)
第二十四話 (蔵元家、幼馴染、男友人、担任)
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人を膝の上に乗せてあやしながら、アリシアとの会話を聞いていたアルフが、ピクンと耳を動かして肉という単語に反応したのか、声を上げた。さすが、本性がオオカミなだけはあると思う。
まあ、何はともあれ、今日はハンバーグなのだ。確か、翔太も嫌いではなかったはずだ。基本的に好き嫌いがない翔太だが、よくよく見れば、好みだってきちんと把握できる。
さてさて、我が家の食欲旺盛な子ども達のためにも、今日も料理を頑張りましょうか、と晴れた空の下、翔子は思うのだった。
◇ ◇ ◇
雨宮桃香にとって、蔵元翔太とは、ヒーローだった。
彼女と彼の出会いは、彼が懇意にしている仲間の中で一番古株と言っていいだろう。なぜなら、桃香は翔太の近所に住む子供の一人で保育園時代からの仲間なのだから。あの頃の仲間は半分ぐらいが聖祥大付属小学校に来ていたが、翔太が所属する第一学級に残っているのは、一握りの四人になってしまった。
桃香が、翔太にテレビに出てくるようなヒーローのような感情を抱いたのは、彼女が保育園時代の頃だ。あれは、とある休日のことだった。桃香と彼女の友人である瀧澤夏希と一緒に公園の砂場で遊んでいるときだ。一生懸命積み上げた砂の山の下にトンネルを通そうとしていた彼女達は、夢中になっていたためか、彼女達にこっそりと近づいてくる影に気づくことはなかった。
だから、彼女達がその影に気づいたときは既に逃げることが不可能な状態だった。
ハッハッハッと舌をたらしながら、尻尾を引きちぎりかねないほどに振る中型の犬がいつの間にか、桃香たちの近くにいた。さて、保育園の五歳児にとって中型の犬というのは、意外と大きく感じる。身長との相対的なもので見れば、大人が大型犬に相対するようなものだろうか。
そんなものが近くに来れば、今まで一生懸命に作っていた砂の山が壊れることになろうとも一直線に逃げ出すのは無理もない話だ。現に振り向いてその犬がいることに気づいた桃香と夏希は逃げ出した。砂の山も何もかもを蹴飛ばして。それほど怖かったのだ。
しかし、偶然、近くにいた犬というのは人懐っこい犬だったのだろうか。桃香たちは気づかなかったかもしれないが、首輪をしていることからも簡単に推測できた。人懐っこい犬の前で、いくら怖かろうが逃げるのは逆効果である。悪気がない犬は、遊んでもらえるものと思ってしまい、喜んで逃げ出す彼女達を追い掛け回す。
しかし、それは犬側の都合であり、子どもの桃香たちからしてみれば、どうして追ってくるのっ!? という悲鳴を上げたいに違いない。現に、彼女達は涙で頬を濡らしながら必死に公園の中を逃げていた。
逃げる桃香たち、追いかける犬。
この構図が壊れるためには、犬が疲れるか、あるいは、桃香たち
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