空白期(無印〜A's)
第二十四話 (蔵元家、幼馴染、男友人、担任)
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といわれれば、嘘になる。
子ども一人とはいえ、育てるのは大変なのだ。それなりの責任も生まれてくる。養い、育てることがどれだけ大変なことか、翔子は、分かっているつもりだった。むろん、翔太の性格や態度から考えれば、まだ分かっていない事のほうが大変だし、育て上げた経験もないが、大人であり、それなりのことを経験している以上、安請け合いはできない。
しかしながら、夫である宗太と一晩話し合った結果、アリシアが見せる笑顔や、楽しそうな声を聞いて、家族として過ごした以上、彼女を手放すことはできないという結論に落ち着き、育てていこう、ということで解決した。
現在は、彼女を記憶喪失の女の子として戸籍を作る手続きを行っている最中であり、彼女の戸籍が出来次第、養子縁組を組むことになるだろう。ちなみに、アルフは、人としての手続きを取っておらず、大型犬として登録されている。
「母さん、もって来たよっ!」
アリシアが翔子に声をかけて一分ぐらい経っただろうか、ようやくアリシアは翔子の足元に洗濯籠の山を持ってくることができていた。アリシアは、自分の成果を主張すると共に少しだけ期待したような笑みを浮かべていた。
「うん、頑張ったわね」
翔子はその期待にこたえるように屈んで、アリシアと視線を合わせるとガシガシと少しだけ乱暴に頭をなで、自分の胸元に抱き寄せる。彼女の体温は子どもだからだろうか、胸元から感じる体温は、大人よりも温かかった。アリシアは翔子から抱きしめられたのが嬉しかったのか、あるいは褒められたのが嬉しかったのか、へへへ、と笑っていた。
数秒ほど抱きしめた後、これでおしまい、と言って、立ち上がる。まだまだ、仕事はあるのだから。
「ねえ、アリシアちゃん。晩御飯は何がいい?」
「え? う〜ん、と」
洗濯籠から洗濯物を渡す手を止めずにアリシアは、色々な料理を思い浮かべているのか考え始めた。これが、この子の可愛いところだ。翔太ならきっと、なんでもいいよ、で終わらせているはずだから。
「う〜ん……ハンバーグかなぁ?」
実に定番だった。だが、それがいい。ちょうど、昨日はメインが魚だったことを思い出し、しばらく肉系統を出していないこともあってか、今日はアリシアのリクエストどおりにしよう、と思った。
「そうね、じゃあ、今日はハンバーグにしましょうか」
「やた〜!」
バンザーイと両手を挙げて喜ぶアリシア。一つ一つの動作が、子どもらしくて実に可愛らしい、と翔子は思った。やはり、彼女を引き取って正解だった、と。もちろん、子どもが一人から急に四人に増えるのだから大変だが、彼女にはその苦労をいとわないほどの価値がある、と心の底からそう思った。
「え? 今日は肉なのかい?」
縁側においた秋
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