第七十五話 アイザム、死す
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オルバンはそんな彼に対してさらに叫んだ。
リヒテルは抵抗も空しく連行されていった。そして重い扉が閉じられる音がした。
「フン、若造が」
オルバンは一人になると呟いた。
「奴は鋭い。リオン暗殺の黒幕がわしだと知れば面倒なことになるな」
「オルバンよ」
ここで部屋にある大型モニターのスイッチが開いた。
「はい」
そこにはあの髭の赤い顔の男がいた。口は額にある。暗黒ホラー軍団の総帥であるダリウス大帝であった。
「地球から撤退したそうだな」
「はい」
オルバンはそれに頷く。
「あくまで一事的なものですが」
「ならばいいがな」
ダリウスはあえて多くは語らなかった。
「そしてその司令官は」
「只今更迭しました」
「そうか。では以後は我等の四天王が指揮を執る。これでよいな」
「はい」
「そしてだ」
ダリウスは言葉を続けた。
「小バームを地球圏へ移動させよ」
「何とっ」
「不服なのか?」
「いえ、それでは小バームの民を危険に晒すことに」
実はこれは嘘である。オルバンは民のことなぞ何一つ考えない男である。ただ自らの保身の為であった。これがオルバンの正体であった。
「犠牲を恐れる者が勝利を掴むことはできぬ」
ダリウスはそんな彼に対して言った。
「それにこんなことに臆していてはバームとゼーラの友好は成り立たぬぞ」
「わかりました」
そこまで言われては引き受けないわけにはいかなかった。
「それでは仰せのままに」
「うむ」
ダリウスは鷹揚に頷いた。それは主が僕、いや奴隷に対してする動作であった。
「案ずるな、あの青い星は我等のものになる」
「はい」
「我等のものにな」
その言葉には深い意味があった。だがオルバンはそれには気付かなかった。ダリウスだけが知っていたのであった。
第七十五話完
2006・2・21
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