四話 名前と家族
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この前お話した子ね、でこの子が悠二君」
「うん」
さくらが二人のことを紹介すると由夢は嬉しそうな笑顔でうなずく。
続いてさくらは由夢の後ろへと目を向けると
「音姫ちゃんもおいで」
そう、声をかけた。
「…………」
小さく漏れる息と共に、ドアの隙間からもうひとつの顔が飛び出す。由夢とよく似た、顔立ちの少女でこれまたよく似た茶色の髪を大きな桜色のリボンでポニーテールに結った可愛らしい少女だった。
「ほら、由夢。ちゃんと外にでて」
「はーい」
音姫のほうがお姉さんのようで、由夢にいうと可愛らしい返事と一緒にひょこひょころ出てくる。小さな方は少し恥ずかしそうに、大きな方は少しぶすっとしながら。
そんな様子に、自然と悠二は笑みがこぼれる。
「ボクはお兄ちゃんに話があるから、後は適当にやってね。ちゃーんと仲良くするんだよー♪」
肝心のさくらは笑顔で、そんなことを宣うとさっさと家の奥に入っていってしまう。どうやら、完全に二人に放り投げるつもりのようだ。
結果、取り残された少年少女4人
義之は相変わらずどうしたらいいのかわかりかねている様子だが、悠二は一歩、前に出ると
「とりあえず、僕は水無月悠二・・よろしくな」
「「う、うん」
二人とも、悠二の笑顔に見とれて顔を赤くする。
「桜内義之です。よろしく」
そして手を差し出すが・・
…………。
でも、その手に触れるものはなく、ぶらぶらと宙に浮いたまま。
「あ、あはははは」
そして、渇いた笑みを貼り付けた義之が諦めて、手を戻そうとした時、ぎゅっと暖かい感触が義之の手を包んだ。
「あ・・・」
「ゆめ」
それは嬉しそうな笑顔を浮かべた由夢の手だった。
「へ?」
突然、由夢からかけられた言葉に鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする義之。突然のことでそれが何を意味しているのか、測り兼ねたのだろう。
「朝倉由夢」
「え〜っと、名前?」
そういって、由夢はにーっと子供らしい純粋な笑顔を浮かべて言った。
そこで、ようやく、名前だと気付く義之。そして、確認すると
「うん」
肯定と共に笑顔でうなずいてくれた。
「そっか、由夢って言うんだ」
噛み締めるように呟く義之。
「そう、よろしくね……お……」
恥ずかしそうに顔を赤らめ、由夢は言葉を続ける。
「お?」
「お……おにいちゃん達」
恥ずかしさで、顔を真っ赤にしながら由夢は言った。
「音姫」
ポツリと一言。
妹とは対照的にまるで二人を歓迎していないかのようにそれだけ言うと、少女・・・音姫は家へと入っていってしまう。
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