四話 名前と家族
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ぐだからね」
それをみて、さくらが幸せそうに笑う。
「えっと、あの、その……」
なにかを思い出せないのかしどろもどろになってしまう義之。
「さくらだよ。芳乃さくら」
さくらは義之の顔をまっすぐに、そしてじっと覗き込む。
けれど、よしゆきは恥ずかしさのあまりに目を反らしてしまう。でも、その数秒の間をおいて
「……さくらさん」
気恥ずかしさもたぶんにあったろうに・・でも、義之はしっかりとした言葉でそういった。けっして、大きな声とはいえない。
けれども
「うん♪」
笑顔がはじけた。さっきまでの不安そうな表情はどこへやら、満開の桜の如く人を魅了する笑みを浮かべて、義之の言葉に答えた。
「ほら、悠くんも!」
そして、悠二にも同じように促す。
「僕もか?」
「うん!」
「やれやれ…。芳乃」
「ぶ〜」
仕方ないといった様子で呼ぶが、先ほどとは打って変わり不満丸出しと言った感じのさくら。
「――僕にどうしろと?」
「名前で呼んで」
「――」
頭をかいてやれやれと嘆息する。そして、仕方ないと割り切ると
「――さくら。これでいいだろ?」
「うん! よろしくね、悠くん♪」
喜色満面の表情で頷くさくらにまたやれやれと肩を竦める。
――名前を呼んだだけで。
(まったく、どこまで自分殺せば気が済むんですかね…)
と、隣を歩く少女の想いを考えると、ため息が出るのを止めることはできなかった。
*
それからさらに数分ほど歩き続けた先にさくらのいう家はあった。片方は一般的な白い外装の一軒家。そして、もう一方は古風な印象を受ける標準より大きめの木製と思われる家。
「ここが義之君の御家だよ」
さくらはそういって前者の家のインターホンを押してなにやら一言、二言話すと中からパタパタという階段を下りるおとがして――
「じいーーー」
「……え、あ、えっと。」
ガチャリと僅かに開いた扉から少女が二人に視線を注ぐ。悠二は平然としているが、義之は突然のことに動揺してしまっているようだ。
「…………」
「じー」
「え、あ、えっと」
「じーーーーー」
「あ、あの」
「じーーーーーーーーーー」
「さ、さくらさん?・・・お兄ちゃん!?」
注ぐ視線に我慢できなくなったのか、隣の悠二とさくらに助けを乞うが
「にゃはは、こんばんは由夢ちゃん」
「こんばんは」
さくらは知らん振りを決め込み、少女・・・由夢へと挨拶する。由夢もさくらに挨拶こそ返したものの、視線は義之に固定されたまま、動いていない。
「この子が義之くん。
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