四話 名前と家族
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が子供を心配するように悠二に言葉をかける。
「どうするって、野宿しかないだろうが」
「野宿って……」
悠二の答えに呆れるしかないさくら。
「――だったら、家にこない? 悠二くん」
「……それは助かる。だが、いいのか?見知らぬ人間を家にあげても。僕がなにかしないとも限らんぞ」
「じゃあ、何かするの?」
「それは…」
「フフフ……」
答えづらそうに言いよどむ悠二をみて、さくらは嬉しそうに微笑む。
「それに、ボクだけ助けてもらうなんて悪いでしょ?だから、Give&Takeだよ。悠二くん♪」
「――わかった」
そう言われては了承するしかなかった。
前世での成人した姿ならいざ知らず、いまのこの未成熟な体での無理は禁物だからだ。
「そうそう、子供は甘えるのが仕事だよ♪」
渋々といった様子だがしっかりと頷いた悠二のようすにさくらは満足そうに笑った。対して悠二はさくらの手のなかで転がされているかのように覚え、つまらなそうに鼻を鳴らすのだった。
*
そんなやり取りのあと、さくらの家に向かうとのことで一緒に桜公園を出て、今現在の道を歩いているのだった。
「――しかし、不思議な島だ」
周囲に爛々と咲き誇る桜を見て、ひとり呟く。
「綺麗でしょ?桜」
「――そうだな」
いつのまにか、後ろを歩いていたはずの悠二の隣にはさくらと彼女に手を繋がれた義之がいた。
「だが、四季がないというのもいまいちつまらん」
「――悠くんってホントに子供?」
四季折々の変化をそれなりに好んでいた悠二としては普遍の桜というのはあまり好みではないのだった。
そして、言われたほうは言っていることがとても九歳時のものとは思えず歳を疑ってしまう。
その疑問にわずかに不満と諦観を混ぜた苦笑を浮かべて悠二は答える。
「――ああ、残念ながらな」
「残念ながらって、ほんとに悠二くんって子供っぽくないね。まるでお兄ちゃんと話しているみたい」
「お兄ちゃん?」
「僕のお兄ちゃん。といっても、実際に血がつながっているわけじゃなくてボクがそう呼んでるだけなんだけどね」
そう、寂しさと僅かながらの思慕を感じさせるもの悲しげな声音でさくらは言った。
「――そうか」
少々、追求したいところもあったが、悠二はそこで言葉を閉じた。他人の自分が踏み込んではいけない領域。それを感じたから。
そして、数秒の沈黙が二人の間を流れていく中、シリアスな空気を切り裂くようにぐ〜と気の抜けた音が周囲に響く。
「あう……」
音の発生源である義之は恥ずかしそうに赤くなった顔を俯かせる。
「あはは、お腹すいた?もうす
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