三話 変わる悲劇と恋の蕾
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てきた理由はなんとも自分らしいものだったので苦笑する。
もう見捨てたくない
それが悠二のいま、さくらを助けようとする理由だった。
「っ!?……そんなことができるの!?」
「肯定だ。だが、あくまでただの応急処置だ。根本的な解決にはなっていない。で、いいのか?」
「――うん」
数秒の逡巡の後、さくらはそう答えた。
あまりの呆気なさ。物わかりの良さに悠二は少しならずも目を丸くした。そして思わざる負えなかった。
『本当にこいつは魔術師か?』
とはいえ、いまは関係ないことなのでそこで思考を止めると桜の前へと近寄る。
「近くで見るとさらに巨大だな。……解析開始」
幹に手を翳して、魔術回路に意識を持っていくと、再び解析の魔術を発動させる。
「―――ッ!?」
瞬間、悠二はすぐに顔をしかめる。
(なんつう、量の人の意識だ…)
桜の樹。その内部へと解析のために、意識を軽く潜らせる。
――それだけだというのに、凄まじいまでの意識の暴風にさらされ、普通の人間なら瞬く間に意識が持っていかれそうになるほど。
それもそのはず、この桜は島中に咲き乱れている桜の花弁。それを媒介に、人の夢を集めている。
そして、それを感じて悠二は自分の推論が正しいことを感じた。
(だが……)
だがと、悠二は笑う。
悠二にとって、この程度の意識の暴風、微風にも等しいものだ。
(これをこうしてっと…)
意識の暴風を物ともせずに、中枢へと辿りついた悠二は、すぐさま解析し、構造を把握しようとする。
だが、悠二はその見積もりが甘かったことを思い知らされる。
(――こいつはまた……)
彼の予想を遥かに上回る構造の複雑さに、思わず呻いてしまう。
しかし、こうなっては後にも引けないと悠二は必死に解析を続け、体感時間で三十分ほどだろうか?
それぐらいたった頃に、ようやく概要を把握することに成功した。
(――ふう)
内心で、安堵の溜息を漏らしつつ、回路の一部を弄り、回路を書き換えていく。
慎重に、慎重に。余計な回路を一つでも弄れば、この樹は暴走を始めてしまう。そうなっては、どうしようもない。
(――よし)
糸を針に通すような凄まじい集中力で一連の作業を終了させると、意識を肉体へと戻していく。
「―――凄い…」
完全に、肉体に意識が戻ったとき、さくらが信じられないものを見るような顔をしていた。それをみて、悠二はまるで悪巧みが成功したような幼稚な達成感に満たされた子供のような顔で笑う。
「どうだ?」
ニヤニヤと人の悪そうな笑みを隠そうともしない悠二がさくらに尋ねた。
「う、うん。大丈夫だよ」
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