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魔法と桜と獣
三話 変わる悲劇と恋の蕾
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 つぎの瞬間には敵意すら滲ませ、さくらは悠二を睨む。普通なら、そんな反応をしたら『はい、そうです』といっているようなものだと気付くだろうが皮肉なことに彼女にそんな余裕はなかった。

(藪蛇だったか……)

興味本位で鎌をかけてみたら本当だったようで、少し後悔する。

「さあ?とりあえず、この先にあるもの」

 だが後には引けない。ここまできたなら毒を喰らわば皿までと開き直り、問いかける。

「っ!!ロンギヌス!」

『Ja, Set up《了解、セットアップ》』

 彼女のネックレスが電子音声で答え、わずかなタイムラグの後魔方陣に包まれ、服装が変わる。
 そして、その手に握られているのは既視感を覚えさせられる黄金に彩られた長い直槍。
 ただ存在するだけだというのに、凄まじい威圧感を醸し出していた。

「ごめんね、僕はどうしても桜を守らなくちゃいけないんだ」

 自分の背丈ほどもあるその槍の振り回されることなく、扱ってみせると悠二に刃を向ける。そこに乗せられてるのは殺意でも、闘志でもない。もしも、どちらかだった場合、即座に攻撃に移っていた。だが、彼女の黄金の槍に乗せられているのはなにかを守ろうとする悲壮なまでの決意。
 それが痛々しいまでに悠二には伝わってしまう。
 そして、確信する。この奥に存在するナニカを彼女は命を懸けてまで護りたいのだ。

「―――悪いが、それを聞いては黙っているわけにはいかない。術式解放」

 唱える。二度と使うことはないであろうと思っていた術式を。途端、足もとには魔法陣が現れ、ソレが起動する。
 使っている悠二でさえ、これの本質がなんなのかはわからないソレを。

「させないよッ!」

 突然、発動した術式に気付いたさくらは僅かに体を強張らせる。そして、手にもつ槍に黄金色の魔力が集結し、いつでも一撃を放てるといった気配を出し始めた。
 だが、悠二に焦りはない。
 さくらの動作より一瞬早く術式の構築は終わり、一時的にそれは片鱗を見せる。
 
「ぐっ!?」

 悠二の足もと。そこに生まれた黒い魔法陣から生み出された碧の鎖がさくらの四肢を絡め捕り、捕縛する。
 やられる。そんな刹那に死を覚悟したさくらだったが、いくら待っても死の欠片はおろか、痛みすら襲ってこない。
 恐る恐る目を開けてみると、目の前にたった悠二はやれやれといった感じに肩を竦めていた。

「悪いが説明してもらうぞ。お前がそこまでして守りたいその桜とやらを」

「えっ!?」

 そして、投げかけられた言葉に思わず目を見開く。

「――ボクを殺さないの?」

「なぜ?」

「――桜を破壊しないの?」

「どうして?」

「「―――」」

 悠二はさくらの的外れな質問に
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