二話 桜とさくら
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どこか嬉しそうにVサインを出している女神を思い浮かべて、先ほどとは違い思わず顔を右手で覆って、疲労感に満ちたため息を吐き出す。肉体年齢九歳の子供が、まるで疲れたサラリーマンのような溜息を吐きしているのは非常にシュールな光景だ。
「――こんな能力。間違っても頼んではいないぞ。結衣……」
そんな文句を呟いてもなくなるわけでもないし、あって困るものでもない。ありがたいと思って使うしかないと頭を切り替える。
続いて視界になにやら金色の物が入っていることに気づく。
まさかと思いつつ、ためしに自分の髪の毛を一本抜いてみると、驚いた。
「マジか…」
見慣れた真っ黒な毛はそこにはなく、そこにあったのは金色の毛髪。染めたようなくすんだ金色などではなく、純粋な黄金色であった。
「はあ、この十分足らずで何回驚けばいいのやら……。まあいい」
流石にもう慣れたのかもう一回、ため息をは吐き出すと諦観と共に頭を切りかえて、次は装備品の確認に入る。
装備品の状態によって今後の行動が左右されるわけではないだろうが、確認を怠るのは不味い。
手始めにレッグホルスターから悠二愛用の拳銃『ジグザウェルP250』を取り出すと、弾倉を出したり、スライドを引いたりして異常がないか調べる。
「ジグは問題なしか」
ハンドガンをホルスターに戻すと懐に手を入れて、中に入れてある武器を確認する。手に感じる感じは間違えることなく使い慣れた仕事道具。
現状の確認を終えて、意識を外へと向ける。
「――さて、これからどうするかね?」
なにも情報がなく放りだされているわけだからとりあえず情報を得ることが先決だろうと考える。その手段としては使い魔を放つのが一番、手っ取り早いのだが今現在では、使い魔を作る材料がないためそれはできないため、却下。
すると、残った案は一つしかなくなる。
「やれやれ。昔ながらの方法で行くしかないか」
渋々といった様子で歩き出す。地面に落ちた薄ピンク色の桜の花弁を踏みしめて、桜の森を進んでいく。渡り鳥並みなどとは言わないまでも悠二は多少は方向感覚に自信があった。
その方向感覚だけを頼りに悠二は森の中を歩いていく。
「しかし、不気味なくらいに満開な桜だな」
道中。前後左右、すべてを満開の桜に覆われていることに少し眉をひそめる。仮にいまが四月の真っ盛りだとしてもここまで桜が満開になるものなのか?
少なくとも、悠二の記憶の中にはこういった完全な桜。しかも、複数の其れを見たことはなかった。
むしろ、人工的なモノだといったほうが納得できる。
(魔術師かね……)
この桜は魔術によるもの、そしてその裏にある目的や魔術師のことを考えて、知らず知らずの内に思考の海へと沈んで
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