ALO編
七十三話 兄、弟、妹(リョウ、カズ、スグ)
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前で起きているその戦いは、決してうだつの上がらないゲーマーがただ剣を振り回すだけのチャンバラごっこでは無かった。剣と剣がぶつかり合い、相手の剣を避け、即座に反撃。それすらも回避する。
美しく、常に躍動感と緊迫感に満ちたそれはまるで一つの芸術作品。一瞬も気を抜く事など許されない……妖精と剣の輪舞……
「凄い……」
これまでプレイしてきた、どんなゲームよりも心躍る戦いが、其処にはあった。
ゲームを始めた頃から今まで、ずっと憧れた勇者の……剣士の世界が、其処には有る。元々、リーファ/直葉には、憧れに近い形で恋愛感情を持った。それが今、敬意へと変わりつつあるのを、レコンは自覚する。
まだ、彼女に自分はちっとも釣り合えない。元々、どこかでは分かっていた。それでも告白を強行出来た事は正直自分を誉めても良いと思うくらい勇気が必要だった。しかし、それは本当に勇気だったか?自分は所詮一生彼女と釣り合う事など出来ないと、諦め、開き直っただけでは無いのか?
そう思った時、レコンの中に、初めて味わう衝動が湧き上がった。
……嫌だ。
もっと……もっと彼女の居る世界へと近づきたい……もっと……自分にも、あんな戦いが出来たら……
「よっ、どうだ?」
「あ……リョウさん……」
後ろにリョウが居た。先頭に夢中なあの二人には最早気付かれる事は無いだろうと思いホロウ・ボディは解除していたのだ。
リョウはレコンと目があった瞬間、その瞳を少しだけ驚いたように見開く。
「へぇ……なんか影響でも受けちまったか?」
「え、い、いやその……リーファちゃんも、キリトさんも、ホント凄くて……だから、ちょっと、その……」
「はは……ま、励めよ少年」
「は、はい……」
その後も食い入るように二人の戦いを見つめていたレコンを、リョウはニヤリと笑いながら一瞥し、二人の戦いに目を戻す。
互いの思いをぶつけあうように続いた二人の戦いは、やがて二人が同時に剣を離し、互いの斬撃を受けようとして抱き合うようにぶつかったところで、幕を閉じた。
「ったく……剣、回収しといてやるか……」
「あははは……そうですね」
それを見て居た二人の男が、ため息交じりに小さく呟いた事など、戦っていた二人は知る由も無い。
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