ALO編
七十三話 兄、弟、妹(リョウ、カズ、スグ)
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ろには母親の部屋のジャンク品から自作のマシンを組んで遊んでいたから、既にハードに関しては結構な知識が有ったのだ。ちなみにその時の金は、涼人が貯めていた金と、和人の貯金をそれぞれ半分ほど使い、高性能には少し届かぬものの、それなりに良い物だった。
ただそれ以上に良く覚えているのは、そのマシンを組んでいた時の楽しさだった。
不思議な感覚だった。普段人と接している時は必ずと言っていいほど感じていたあの感覚が涼人相手だと殆どない。兄のような……否、あるいは兄その物と言っても過言ではないその青年と話し、共に遊ぶ時間は、ネットゲーム以上に、和人にとっては居心地が良かった。それはあるいは、涼人と言う人間が、全くの裏表なく、和人に接していたおかげもあるのかも知れない。
しかしその事を和人が気づくのはSAOに入ってからの事だ。
いや、あるいはSAOと言う特殊な環境下に入ったからこそ。と言えるだろうか。和人自身が、気付いたのだ。そもそも他人の裏表を疑うこと自体に、全く意味が無い事に。
本質的にはネットゲームであるSAOだが、その世界は殆どリアルと変わりがなかった。何故ならば、SAOの世界は脳に五感の情報として送り込まれた感覚を、自分の脳が眼前にある者だと認識しているだけの世界だったからだ。
脳の五感が認識しているだけで、しかもログアウト不可の世界。その言葉に現実世界と一体どんな違いが有るのかと和人が自身に問うた時、残った答えは何も変わらないと言う単純明快な解答だけだった。
だからこそ、和人は悟ったのだ。ネットゲームの世界でした事が結果的に自分の起こした事である事に間違いないがゆえに、その裏に居る人間にもそれによって起きる精神的、あるいはVRならば肉体的な反動が返ってくるように、現実世界の人間の裏表を疑う事にもまた意味はなく、唯出来るのは眼前の人を信じ、受け入れる事だけなのだと。
「俺……さ」
「ん?」
俯きながら小さく切り出した和人の言葉に、涼人は耳を傾ける。
「SAOに行く前、人との接し方が良くわかんなかった……でも、あっちに行ったら生まれて初めて心の底からスグや……親父や母さんに会いたくなって……そのうち、いろんな経験して、人との接し方も自分でも分かるくらい変わってた……」
「あぁ」
和人の独白を、涼人は唯黙って聞く。
「この前目が覚めて、スグの顔を久しぶりに見たときさ……俺、本当に嬉しかったんだ。だから、この数カ月の間、スグとは接したいように接してきたつもりだった」
「…………」
「でも、それだけじゃ足りなかったんだよな……兄貴の言う通りさ、スグも、二年間の間にちゃんと変わってたんだ。俺、それにちゃんと気づいてやれなかった。うぬぼれかもしれないけど……多分、スグがALO始めたのも、俺の事スグなりに知ろうとし
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