ALO編
閑話 それぞれの見る彼女
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に若々しい顔立ちをしており、長い黒髪はつやを保っている。
娘が目覚めた時、自分がやつれていては心配されてしまうからと健康には気を使ってきたつもりだ。しかし最近は、だんだんと心が折れかかって来ているのも確かだった。
女性は名を、麻野真理と言う。
いつものように入口で見舞いの受け付けを済ませ、真理はエレベーターに乗り込む。
会社の近くに入院した娘の様子を、毎日の昼休みに見に来るのは、彼女の日課だ。娘の部屋で昼食を取っていると、ときどき昼休みの終わりに遅刻してしまう事が有るのだが、仲間達はそれを分かってくれ居ているようで、有る程度は融通を利かせてくれる。
「でも、流石にそれに甘える訳にはいかないものね……」
そう呟いて、彼女は先程購入したサンドウィッチをちらりと見た。それと同時に、エレベーターが三階へと到着する。
目的の部屋は、エレベーターを出てまっすぐ行くとすぐに見えてきた。彼女の娘。麻野美幸の病室である。
リニアスライド式のドアを開き、中へ入ると……この時間にしては珍しく、先客が居た。
時折、以前の学校の友人が訪ねて来る事は有るが、この時間帯はまだ授業中の筈だ。
一瞬、真理には娘のベットの横に座るその男が、だれであるのか分からなかった。後ろ姿なので、顔は見えない。ベットの上に手を置き、娘の体には触れず、唯その手が拳を作っている。
その拳は、一目見ただけで分かるほどに、きつく、きつく握り締められ、小刻みに小さく震えていた。
真理にはそれが、まるで何かに激しく憤っているように見えて仕方がなく、ほんの一瞬だけその男に恐怖すら感じたほどだ。
しかし彼女の眼は幸いにも、警備員を呼ぶよりも前に後ろ姿からそれが誰で有るのかを認識することが出来た。
「涼人……?」
彼女が声をかけた途端、それまで彼の後ろ姿から漏れていた怒気が一瞬で消え失せる。それが目に見えないものであった性もあって、真理が自分の感じたそれを、気のせいだと思ってしまったのは、仕方のない事だろう。振り向いた青年は、見慣れた笑顔で口を開く。
「おろ、真理おばちゃんか」
「おろ、じゃないでしょ?お昼頃来るなら言ってれればよかったのに。中に入ったら突然男の人が居るから、警備員の人呼ぼうかと思ちゃったわ」
「わり。忘れてました」
「ふふ……良いのよ。また来てくれたのは、わたしも嬉しいから」
ふふふ。と微笑んだ真理に、娘の幼馴染である青年……桐ケ谷涼人苦笑して返す。
彼は自分が目を覚ましてから、時折こうして娘の見舞いに来てくれる青年の一人だった。あちらの世界では、娘と一緒にいた時期もあったそうだから、心配してくれているのだろう。
涼人とは反対側に付き、娘の顔を眺める。相変わらず目は閉じられ、唯彼女は安らかに眠るだけだ。
二年以上も、ず
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