ALO編
閑話 それぞれの見る彼女
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
眼前で行われている狂気の実験の犠牲。それに、自らの親友が使われている。
ヒトのクローンを作る事は国際法で禁止されているが、これらはその人類最大の禁忌にすら匹敵する最大の悪行だ。単に犯罪であるとか、そう言った問題だけでは無いのだ。人の魂はすなわち個人の最大の尊厳。それが踏みにじられ、破壊され、蹂躙される到底許されるべきものではない。
しかもその発端は、彼女やその親友、恋人が命をかけて戦った先にあったはず物であり、この実験の始まりの引き金を引いたのは自分たちで、挙句の果てに、実験の犠牲となっているのは同じ世界で友として過ごした彼女の親友だ。それはこの二カ月の間幽閉し続けられた少女にとっては、余りにも残酷な真実だった。
アスナは数歩後ずさり、崩れ落ちそうになる膝を必死に支える。
ここで折れるわけにはいかない。すぐにでも脱出してこの事を世間に流布し、彼女を……サチを救わなければならない。
「待ってて……すぐ、直ぐに、助けるから……!」
そう言って、アスナは被検体の脳の間を、すり抜けるように駆け始めた。
────
運命と言うのは、実に残酷だ。
その数分後。アスナは、呆気なく再び捕えられた。
あの後、走って脱出用であろうシステムコンソールの前までは行ったものの、後少しの所で須郷の部下である研究員(何故か巨大なナメクジのような姿だったが……)に捕えられ、直ぐに此処に連れ戻されてしまった。
結局戦利品はコンソールに刺さっていた、銀色のカードキーのみ。しかしこれも、コンソールが無ければ役には立ってくれないだろう。
とりあえず、枕の裏にそれをしまいこみ、アスナはうつ伏せになってベットに顔をうずめる。
何もせずしばらくそうしていると、あの脳髄の部屋で見た、No.152と言う脳の光が、思い出された。
激しくスパークする光と、真っ赤に染まった脳。下のロゴに流れていた、Pain、Fearの文字……
「サチ……」
彼女の笑顔は、今でもはっきりと思い出せる。微笑むような可愛らしく、同時にとても綺麗な笑顔。
それが、アスナの頭の中で、痛みと恐怖を流し込まれ、苦痛にゆがむ顔へと変わっていく。
聞いてはいないはずの、声が聞こえる……
タスケテ……!タスケテ……!イタイ……!コワイ……!タスケテ……!
「ごめん……ごめんね、サチ……私、何にも出来ないよ……アナタを、助けてあげられない……!!」
この日アスナは、この鳥籠の中へ来て初めて、涙を流した。
────
都内の、とある病院……の廊下を、一人の女性が歩いていた。
地方から発進し、驚くべき成長を見せて瞬く今に成長したある化粧品会社の役員を務めるその女性は今年で39。しかし、もう一年で四十に差し掛かるとは思えないほど
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ