ALO編
七十一話 Negotiation
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は、名誉値《オナーポイント》を稼ごうと思ったら絶好の標的なのだいきなり範囲魔法をぶっ放されていないだけ、感謝すべきだろう。
と、リーファがトンキーを庇うように前に出た。どうやら、何が何でもトンキーを諦めるつもりは無いらしい。低い声が響く。
「マナー違反を承知でお願いするわ。この邪神、私達に譲って」
帰ってきたのは……ウンディーネ達全員からの苦笑だった。代表して、スカウトの男が言う。
「下級狩場ならともかく、ヨツンヘイムまで来てそんな台詞聞かされるとは思わなかったな……『この場所は私の』とか、『このモンスターは私の』なんて理屈は通らない。此処に来るほどのベテランなら分かってる筈だよな?」
あえて言うまでもない。男の言っていることは正論だった。戦闘中であるとかならばともかくとして、まだ誰も手を出していないモンスターや、私有地でもないフィールドに自らの占有権を主張するなどといった主張はこの世界では通らない。こんなものMMORPGをプレイしたことのある者なら普通は知っていて当然、常識レベルだ。彼等に関わらず、誰に言っても呆れられるだろう。
言い返せず俯くリーファをリョウは静かに見つめる。まぁ分かっていたことだし特に思うところも無いが、彼女も中々変わり者だ。
と、俯いたリーファの更に前に出た人影があった。キリトだ。
リーファはどうやらキリトがまた腕ずくにかけると思ったのか、はっとしたような顔をしたが、流石のキリトも其処まではしなかった。
キリトはウンディーネ達に向かって、深々と頭を下げたのだ。それを見て、リョウは額に手を当てると呆れたように深いため息を付く。
「頼む」
あくまでも真剣な声で続ける。
「……カーソルは黄色だけど、この邪神は俺達の仲間……いや、友達なんだ。こいつは死にそうな眼に遭いながら此処まで来た。だから、最後まで、したいようにさせてやりたいんだ」
そういってキリトはよりいっそう深く頭を垂れ、リーファもそれに続く。そうして起こった一瞬の静寂の仲で、リョウは最後まで頭を下げることはなく、ただ一つ、もう一度大きな溜息を吐いただけだった。何故なら、彼には分かっているからだ。そんな頼み方で、効率重視のMMOプレイヤーは揺らがないと言う事が。
案の定、返ってきたのはスカウトの男の失笑と、他のメンバーの爆笑だけだった。
「おいおい……あんたら、ほんとにプレイヤーだよな?NPCじゃないよな?」
『ま、そうなるわな』
笑い混じりに言ったスカウトの男を見て、リョウは特に感慨もなくそう思う。繰り返すが、全く持って彼の反応は正常だ。現状、リーファ達の言っていることはただの我が侭でしかない。そうしてついにスカウトの男が笑いを収め、幾らか鋭さを帯びた口調に切り替えて言う。
「……悪いけど、俺達も、このフィールドま
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