一話 咎人と女神
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?」
「そ。私的には前者を強く勧めるわね」
「−−−わかった。じゃあそのお勧めというのでよろしく頼む」」
僅かな数秒の逡巡の後にそう答えた。すると、結衣は嬉しそうに表情を綻ばせ、満足そうに笑みを浮かべると不意にパチンと指を鳴らす。瞬間、悠二の目の前のなにもない空間が光を放つ。
突然の閃光に思わず目を閉じてしまう悠二だったが光がやんで目を開けると何もなかったはずの空間のはあるものがフワフワと浮かんでいた。
無色透明な膜につつまれたその浮遊物の正体はそれは鎖で黒い鎖で繋がれた二つの小さな指輪と腕輪であった。
二つの小さな指輪にはそれぞれ白と黒の月と太陽の意匠が刻まれている。さらに腕輪にはなにやら鳥が羽ばたいているような紋章が刻印されて、その三つには共通して、水晶のような赤い宝玉が埋め込まれている。
「これは?」
「私からのささやかな餞別の品。役に立つことは約束するわ。それに君の仕事道具も中に入れてあるし」
「――さいですか」
こんな小さな指輪と腕輪の中にどうやって入るのだろうか? そんな疑問が浮かんだが、結衣のことを疑う気は不思議と起きなかったのでとりあえず頷いておく。
指輪は左手の中指と小指に嵌めて、次に腕輪をはめる。サイズはまるで事前にはかったみたいにぴったりだった。
「―――それじゃ、送るね。意識が一旦、なくなるけど大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
「じゃあ、始めるわね。目が覚めたら転生先の世界だから。頑張って幸せになりなさいね。じゃないと、私が骨折った意味がなくなるから」
「了解。じゃあな、結衣」
「ええ。さようなら、悠二」
いうと、結衣は人差し指を軽く噛み切ると空にSのような形をした文字を描く。すると、血がその文字を形作った。
一見、Sのようにも見える彼女が描いた文字は一つの周期が終わり、新たな周期が始まる変容を示す「死」と「再生」を意味する復活のルーン。
転生という儀式にもっとも適したものだろう。
そして、それを目にした瞬間、まるで糸が切れたマリオネットのように悠二の体は崩れ落ちて、そして粒子へと変換されていく。
彼が目を覚ます時、それはすでにあちらの世界への定着を終えた時。
「ーーー良い人生を《ein gutes Leben》」
そして、悠二の体はすべて粒子へと変換され消えていくのだった。
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