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魔法と桜と獣
一話 咎人と女神
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はなかった。

「そう、じゃあ君に神様からのご褒美をあげるね」

 先ほどまでのいかにも神様と言った威厳満載の表情は鳴りを潜め、外見年齢相応の少女の顔で悠二に問いかける。悠二の勝手な推測だがおそらく彼女はこっちのほうが素なのだろう。表情が生き生きしている気がした。

「―――あいにくと僕は無神論者だったんだが?」

「ヤハウェだとか、アッラーだとかあんな低級な神格なんて信じなくていいわよ」

 ハッと鼻で笑うと核爆弾級の発言をサラッと言ってのけた。さすがにその発言には悠二も目を丸くしてしまう。
 もし、いまの台詞を現世のクリスチャンやイスラム教徒が聞いたら卒倒するか、激怒すること間違いなしレベルの危険発言だったからだ。

「―――そういえば」

 そして、不意になにかを思い出したように唐突に切り出した。

「なによ?」

「まだお前さんの名前を聞いてなかったな」

「―――そういえば名乗ってないわね。私は結衣。神階第一位『神皇(シュナイデン・ベルヴェルグ)』って、こっちは名乗らなくていいんだっけ」

 少女…結衣もすっかり忘れていたらしく名乗る。

「知っていると思うが水無月悠二だ。にしても、ベルヴェルクか。……たしかオーディンの別称だったか」

 彼女の名乗った名前からすぐさまその正体を探り当てる。オーディン。北欧神話の主神であり、ルーン魔術の開祖でもある。
 そういえばとようやくそこで思い出した。扉の標識に書かれた文字のことだ。

(ルーン文字だったな。そういえば)

 部屋の主がオーディンというのならばある意味当然の帰結というやつだった。

「そうよ。もっともこれは称号でしかないんだけどね」

「―――ひょっとして、お前。トップだったりするのか?」

「―――」

 言ってはいけないことだったのか、黙ってしまう結衣。どうやら図星らしい。

(やれやれ、こんなのがトップで大丈夫か?この世界)

 少々、行く先が不安になってきたのだった。

「―――ゴホン、それじゃ君の行く先についていうね。ぶっちゃけると、君には二つの道があります」

 ゴホンとわざとらしく咳払いをすると、人差し指と中指を立てて、そういった。

「二つ?」

「そう、二つよ。一つは転生してもう一回、人世をやり直す道。そして、もう一つは、あんまりお勧めしないけど英霊の座に行く道」

「英霊の座……ね」

 一般人なら疑問符がつくだろうが、あいにくと悠二は一般人からかけ離れた存在である。故に、ある程度、その言葉の意味が理解できた。
 だが、悠二としては興味はなかった。自分は英雄の器ではないと思っているし、彼自身あまり英雄というモノが好きではなかったためだ。

「どちらか選べと
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