一話 咎人と女神
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なトラウマともいえる光景が目を閉じれば鮮明にフラッシュバックした。
「――たしかにね、あなたは彼らを救うために何万人と殺しているわ。でもね、それを差し引いても、君は人をたしかに救ったのよ」
まるで慈母か、聖母のような笑みを浮かべて神を名乗る少女は彼が行ってきた所業を肯定した。
世界の全ての人が彼を悪と、そして彼のしていることを『悪』だと否定したのにも関わらず、彼女は曇りの無い笑顔で即答した。
―――その一言で、すこし彼は救われた気がした。
我ながら単純だと自嘲するが、それでも少しは胸の鉛が落ちた気がした。
「―――だから、あなたは地獄へはいかない」
「―――」
少女の決意に満ちた表情に、青年は何もいえなくなってしまう。
「いかせられない。神のプライドにかけて。あなたのやったことは、人間の到底、やれることじゃないのよ。普通の人間は、あそこまで自分を殺せない。あそこまで、機械にはなれない。でも、貴方はそれをやってのけた。それは過ち」
彼女の言っていることは正論だ。人は他人を殺すことはできるが、自分だけは、自分の感情だけは絶対に殺せない。それは人であれば当然のこと。
だからなお、彼がやったことは異端なのだ、過ちなのだ。彼がやったこと、それは言わば神の所業。本来なら彼女らがやるはずだったものを人であるはずの悠二がなしてしまった。それおを放置したこと、看過したこと。そして、その結果、悠二に訪れた不幸な終焉に少女は深く後悔し、憤慨していた。
「だからこそ神は君を救いたい。私達がしなくてはならないことを、させてしまったから。止めようと思えば、とめられたのに。だから、アナタは幸せになってもらわなきゃ私たちが……いいえ、私が私を赦せなくなる」
心底後悔しているようにこぶしを握る神。その表情に嘘は感じられない、本当に心底そう思ってくれている。それを知って、少しうれしくなる。
(神様ってのは傲慢だねぇ)
そんなどこか人間臭い神様に悠二は苦笑しつつ内心で一言。生涯無神論者を通した悠二だったが、こんな人情味のある神様だったら信仰しても等と益体のないことが頭をよぎる。
「気にするな。どうあれ、僕の選んだ道だ」
そんな人間臭く人情味にあふれた幼女の成りをした神の頭に手をおいて、まるで家族と接するときのような、そんな柔らかな笑みを浮かべてそういう。頭の上に手を置かれたことに特に気に留めることなく、念を押すように少女は問いを重ねる。
「―――後悔は、ないのね?」
「ないね」
其れだけは言えた。ああすればよかった。こうすればよかったんじゃないか?といったたぐいの後悔や反省ならそれこそ星の数ほどある。だが、青年の中にこの道を選んだことに対する後悔
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