一話 咎人と女神
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にハメられて……)
左手で手を覆い、やがて苦虫を噛み潰したような表情へと変わる。彼がこうなった理由は簡単。彼の依頼主が彼を裏切ったのだ。
人質を救出するために向かった先で待っていたのは複数の代行者。そして、為すすべなくその命を散らしたというわけだ。
「―――あなたも無茶するわね。あなたの体の状態、わからないわけじゃないでしょ?」
ふうと息を吐き出し、あきれ果てたとばかりにいう。普段の彼だったらあるいはその場を切り抜ける衣できたかもしれないがその時の彼は体はボロボロのスクラップ同然。そんな状態で戦ったのだ。死という結果はある意味必然だろう。
「……ああ」
そして、少女の逝っていることを誰よりも理解できる悠二は返す言葉もなくただ苦笑いを浮かべるのみ。
「なんでこんなところにいるかということは理解した。それで、僕はどこに行くんだ?」
「どこだと思う?」
状況の整理を終えた悠二が自分はどうなるのか?と問うと少女はまるで、悪戯を仕掛けている童女のような笑みを浮かべて逆に質問した。
そんな小悪魔チックな笑顔に一抹の不安を覚えながらも生前?から行くであろうと予測していた場所を告げる。
「−−−地獄」
彼本人は行きたいかと聞かれれば首を横に振ろうが、それも仕方ないことだと割り切っていた。少なくとも一般常識を持つ彼の中では自分は英雄や正義の味方などではなくテロリストに属されるべき人間だという認識があるからだ。
―――水無月悠二。
各国の諜報機関にはブラックリストに登録された超弩級のテロリスト。それが悠二についた不名誉な肩書だった。
「却下ね。あなたを地獄に送ったら、きっと地獄はあふれかえっちゃうわよ」
だが、少女の答えは悠二の予想を裏切ったものだった。少女はやれやれと人を小馬鹿にしたように肩を竦めると次いで指をパチンと鳴らした。
すると、先ほどまで彼の死体を移していた目の前のモニタが切り替わり、画像の変わりに途方もない桁の数字が浮かび上がる。億すら超え、後一歩で兆にまで届こうという莫大な桁の数字。だが、なぜ少女がこんな数字を掲示したのか、そしてその数字がなにを示すのか見当がつかなかった。
「これは・・・?」
「これはね。あなたがいままで救った人間の数よ」
尋ねると、両腕を組んだ少女が彼にとって、予想外なころを言ってのけた。すると、僅かにショックを受けたような素振りをみせるが動揺することはなく、少女に言葉を投げ返す。
「―――そうかもな。でも、救えなかった命だってある」
思い出そうと思えば驚くほど鮮明に思い浮かべることができる。吸血鬼の出来損ないに成り果てた少年少女に対して引き金を引いたとき、たった一人を殺すために旅客機を墜落させたとき、そん
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