ALO編
閑話 歪な狂気
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るために、彼はその人より少しだけ成熟した脳を、そして人よりも歪んだ人格をフル稼働させた。自分の周囲の無能は上の立場にある自分を敬い、自分に平伏すべきだと、彼は信じて疑わなかった。
しかし、そんな彼の前に、どうしても超える事の出来ない壁が立ちはだかる。
名を、茅場明彦。
茅場は、彼自身認めたくはなかったが、天才だった。
自分に出来ないどんな事も、茅場には出来た。いつもいつも、自分よりも茅場は上にいた。
同じ場所にいるだけで、彼の周囲の目は全て茅場一人に向き、自分はその横の付け合わせのように見られた。しかも周囲の馬鹿達は、茅場の横にいると言うだけで、彼の事すらまるで下位の人間であるかのように見た。彼よりも下にいるはずの馬鹿達が、茅場のせいで彼を見下したのだ。
自分よりも下にいる人間から見下され、しかも自分の欲しいものは、栄光も、名誉も、名声も、好意を持った女ですら、全て茅場の方へと流れて行った。
彼のこれまでの人生の中で、茅場と共にいた数年間は最も屈辱と怒りに満ちたものだったと言っていいだろう。
しかし茅場は、彼の前から……更に言うならば世間から消えた。世紀の天才として。そして……史上最悪の犯罪者の一人として。
そしてそれと同時に、彼のそれまでの負の感情を抑えていた者は、完全に消え去り、それらは暴走した。
想定される限り、最悪の方法の一つを持って。
────
今、彼は自身の務める企業の出張に出かけ、その道中の送迎車の中にいる。
「ん……?」
そんな彼の端末に、一件のメールが届いた。
開くとそれは、彼が秘密裏に進めている実験の進行状況報告だった。
「へぇ……」
報告には、幾つかの被検体の実験状況と許可申請が来ていた。その中の一つが、彼の目に留まる。
「おやぁ?これはこれは……」
被検体番号152番の実験進行状況だった。彼女は有る一定の信号に対してとても興味深い反応を示し、時折彼を楽しませてくれる。
流し込んでいるのはFear《恐怖》や、Pain《痛み》。おそらくだが、先天的にそう言った者に精神面で弱人間なのだろうと、彼は予想していた。
「ま、可哀そうだけど。もう少し続けようかねぇ……」
しかしそれが分かっているからと言って、彼がそれをやめるよう指示することなど無い。
傷が有ればえぐる。彼にとっては当然の思考だった。
ちなみに、最近彼が152番に注目しているのは、それだけが理由ではない。
SAOを外から監視していたレクトを含む幾つかの組織体と国は、あのゲームの内部情報を、ほんの少しならば入手する事に成功していた。
すなわち、プレイヤーの名前とレベル。そして、現在位置。
彼は週に何度か、興味本位でそれを見ていた事が有る
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