第十話
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。単に他の種族との間に産まれた子を差す『雑種』とは別に、血統的には同種族でありながら種族的特長から外れた者を差別する言葉。古来は他種族との不義の血筋の雑種で在りながら同族面する恥さらしという意味だが、現在は全く根拠無く使われる差別用語であり、良く陰口として使われて来た言葉だった。
そんな言葉を使わなければならないほど彼女は追い込まれていた。
彼女には自分の存在が両親の仲を引き裂き家庭を崩壊させたという負い目があった。
最初は普通の家庭だった。ただ生まれたばかりの娘が普通より少し大きかったという事以外は。だがネヴィラが1歳になり2歳になり明らかに同じ年齢の子供達とは体格がかけ離れて大きくなるに従い夫婦の仲は冷めていった。
夫は妻に隠れて自分と娘の遺伝子鑑定を行う。結果は紛れも無く自分の子供だと分かったが、鑑定した事が妻に知れると溝は決定的なものとなる。
互いにどちらかの血統に問題があったと疑い合う。フルント人にとって自分の血統が『混じり者』であるなどと認める事は無いために、互いに相手をそう罵るようになり、ネヴィラが5歳になる前に夫婦は、調停に入った裁判所が徹底した遺伝子鑑定を行いネヴィラ本人。両親ともに遺伝子的に純血のシルバ族であるという鑑定が出たにも関わらず破局し離婚に至る。
その後、両親が共に親権を放棄したためにネヴィラは施設に送られてそこで育った。幸い人口増加が国是であるフルントでは施設の子供達は手厚く保護されたが両親に捨てられた彼女の心の傷は大きかった。
ちなみにフルント人の種族といっても、それぞれが全く別の生き物から進化したわけでも、異なる血統から誕生したわけでもない。元は原種と呼ばれる同じ一つの種族から始まり、フルント星中に生活圏を広げていく過程で、取り巻く自然環境などの違いから地域ごとに特性を持つ種が生まれたに過ぎない。
そもそも彼等が持つ純血主義という考え自体が妄想に過ぎなく、各種族は現在も生活環境に応じて変化を続けている。本来のシルバ族は全体的にもっと細い体つきで顔も細面だったが現在は丸い顔立ちで骨格もしっかりしていて大型化している。これは他の種族にも言えることで文明の発達による生活環境の均一化が種族間の差異を減らし、今は滅びてしまった原種とは別の形ではあるが、各種族は再び一つの種族へとなるべく進化の途上にあるという意見が様々な分野の研究者の間でも有力になっている。
「問題はそれだけですか?」
心の基礎に地球人のメンタリティが詰まってるエルシャンにとって、彼女の懸念など、どうでも良い話だった。
実際、彼女にアルキタ族の血が入っていたとしても、それ以前にアルキタ族だったとしても彼にとっては心変わりする理由にはならない。どのみち地球人類からは遠く離れた種である事に違いは無い。
それに雑種への差
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