暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
壱ノ巻
文の山

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いのなら、俺はおまえを殺すぞ」



「!」



発六郎がそういった瞬間、何がどうなったのか、手に痺れが走った。



はっとして見ると、懐刀が弾き飛ばされていた。でも何処に弾き飛ばされたのか、わからない。



咄嗟に発六郎を見ると、表情が苦々しく変わっている。



どうも、発六郎がやったのではないらしい。



他にも協力者がいるの!?



あたしはずり、と一歩下がった。



発六郎が、あたしが下がった分、一歩前に出る。



ちらと屋敷を見たけれど、今すぐに助けが来ることはなさそうだ。



絶望的だ…。



発六郎が、あたしに手を伸ばした。



捕らえて殺す気か、それとも前田を脅すのか。



そんなの、どっちもいや!



あたしは唇を噛んで、身を翻した。



小さい頃に、あたしが落ちた野洲(やす)川。



屋敷のすぐ近くを流れているその川縁にあたしは走り寄った。



発六郎が息を呑む気配がする。



あたしは一瞬だけ、発六郎を見て笑った。



残念ね、発六郎。あたしは、あんたの手にはかからないわ。



あたしは躊躇いなく、水面に足を踏み出した。




















「っ、瑠螺蔚ーーーーーーっ!!!」
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