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戦国御伽草子
壱ノ巻
文の山

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気がぴんと緊張した。



ふと、発六郎の姿が一瞬ぶれた。



「!」



咄嗟にあたしが体を捻ると、後ろの赤く濡れた障子がスパッと切れる。



速い!



発六郎が目を見開く。まさか、あたしがよけるとは思っていなかったのだろう。



あたしはちらりと縁に目を走らせた。



これだけ大仰に立ち回っていれば、誰かが気づいてくれるだろう。



でも、駆けつけた誰かが発六郎に斬られるなんていう事態はごめんだ。



あたしは縁から庭におりた。



発六郎が一瞬戸惑う。多分あまり大事にはしたくないのだろう。わざわざ義姉上達を離れに呼んで斬ったくらいなのだから。



でも躊躇ったのは一瞬だった。すぐにあたしに(なら)って庭におりる。



挑発に乗ったと確認して、あたしは走り出した。



最短距離で家を抜けるために、多少庭の枝に肌を引っ掛けるのは気にせず走った。



所々で、悲鳴が上がる。



発六郎の刀を見たからか、血塗れの発六郎自身を見たからか。それとも懐刀を持って走っているこのあたしを見たからか。



何にしても、これだけ騒ぎが大きくなれば、発六郎ももう掴まるしかないだろう。



まだあたしについてきているか確認しないままにあたしはただ走った。



ついてきているもよし、ついてきていないのなら、それはどこかで発六郎が掴まったと言うことだから、それもよし。



屋敷の外まで走り出て、あたしは息を整えながら、後ろを振り返った。



いない。



あたしは目を細めた。



…ううん、来た!



あたしは門に身を寄せて、発六郎の死角から、懐刀を翻した。



「!」



発六郎の喉に、刃を押し当てる。その背が、屋敷の外壁に当たる。



発六郎の目が、驚きに見開かれた。



「動かないで」



「…」



発六郎が息を詰めるのがわかった。



「どうして義姉上達を斬ったの。あんたの目的は何?どうしてうちに来たの」



発六郎が答えずにふっと笑った。



「…」



あたしは刃を喉の上に滑らせた。じわりと血が滲み出す。



「あんたに拒否権はないわよ」



「俺は死んでもいい」



「使い捨ての駒ってこと?黒幕が別にいるの?」



「…」



「答えなさい」



「俺を殺さないのか。俺はおまえの姉と母を殺した。俺を殺さな
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