暁 〜小説投稿サイト〜
或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十九話 我ら主導者に非ずとも
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
か」
堂賀准将がにこやかに歓談しながら座る。最初から知っていたのか、それとも不意打ちを食らってこの笑みなのか。
――本当に大物だ。
ユーリア姫との舌戦を思い出し、改めて未熟さを思い知りながら最後の一人へと目を向ける。
「執政殿は公式には此処には居ない事になっている。今日は忍びだよ」
場違いな程若々しい声が響いた。
「こうして会うのは初めてだな、馬堂中佐。海良朱未、陸軍大佐だ」
 三十代前半の青年将校が手を挙げる。
 ――海良朱未、安東当主の義弟殿だ。安東家建て直しの功労者である安東夫人の弟であり、兵部省でも優秀な軍官僚だと評価されている。
「初めまして、海良大佐殿、馬堂豊久陸軍中佐です。父から大佐殿のお話はよく聞いております」
笑みが引きつらない様に注意しながら簡単な挨拶をする。明らかに安東家の利益代表者としてこの座に訪れたのだろう。
つまり、駒城、守原、宮野木を除いた二将家と執政府の長、そして陸軍情報将校の巨頭が密談を行うのである。一人だけ格が違いすぎ事を自覚し、脂汗が滲むのを自覚しながら馬堂中佐は席に着いた。
 ――本当に黙って座っていた方が良いな。出来れば目と耳も塞いで三猿でいたい気分だ。



[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ