ALO編
閑話 観ている者は
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「いやぁ、こいつまたエリちゃんの夢見てらぁ……」
とある男が言った。彼は、自分の所属する実験施設に設置された立体表示を覗き込んで、面白いものを見たという風にニヤニヤと笑う。
「何言ってんだ。偶然だろまだ二回目だぞ」
隣に居た男が言う。彼もまた、同じ立体映像を覗き込んでいるようだが、意見は違うらしい。隣の男もまた、自分と同じ研究施設に所属する人間の一人だった。
彼等は、研究員であり、科学者だった。今は、人間の脳についての研究と……その実験を行っている。
「それよりオイ、こっち、見てみろよ」
不意に、隣の男が反対側に会った一つの立体映像を指差した。そこは以前から、良く彼等にとって貴重なデータを残してくれる被検体《サンプル》のモニターだった。研究員《かれら》が前々から、継続モニタリングを特に重要視して行っているサンプルでもある。
「あぁ、152番さんか……おおっこいつはまた凄いねぇ……」
「あぁ、相変わらずこの手の物に関する返しが以上だぜこの子……ワオ、すげぇ反応」
そのモニターの中に出ている反応に対する数値は、素晴しかった。
「こいつはいつもそうだなぁ」と、彼は変わらず感心する。かららがサンプル152番と呼ぶそれは、毎度毎度、PやFと言った物を流し込んだ時、異常な反応を魅せるのだ。今は、Pに対する反応を見ている。
その反応の要因を解析する事は、彼らの研究にとっても大きな前進材料だった。
「これ、併用して流してみようか」
「そうだな。そろそろ同時誘導に入ってもいい時期かもしれない……」
「じゃあ、やっちゃうよぉ……」
そう言って彼は、ホロキーボードのFのボタンを押した。そこには略称で無いF……Fearと言う文字が書かれている。
「さーて、しばらく経過を見るか……」
「そうだねぇ……ねぇ、この152番さんってさぁ……」
「あん?」
隣に居た男が彼の顔を覗き込むと、彼は低い声で呟くように続ける。
「あっちじゃ18歳の女の子なんだよねぇ……」
「そうなのか?良く知ってるなお前」
「この前偶然ねぇ……でもさぁ……」
「ん?」
彼は続ける。
「そんな女の子の頭の中にこういうの流し込むって……やっぱり良心がとがめると言うか……」
「あぁ……そう言う事か……」
真剣さをいくらか帯びた声で二人は話す。そして……
「心にもない事を」
二つの不快な笑い声が、部屋の中に響き渡った……
「じゃあね。152番さん♪」
彼が立ち去ったホロウィンドウには……“脳”が映っている。
そのサンプル名は……
《No,152 M,A》
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