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SAO─戦士達の物語
ALO編
六十六話 旅立ちの空
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そんな言葉に、彼女は笑顔で答えた。

「むしろ……良いきっかけだったよ。いつかは此処を出ようっては思ってたから。ただ、一人だと怖くて決心がつかなくて……」
「赤信号。皆で渡れば、怖くない。ってか?」
「それはちょっと違うけどね……──どうして、」
 冗談交じりにリョウが言ったそれにも、リーファは楽しそうに笑う。しかし不意に、その表情が悲しげに歪んだ。

「どうしてああやって、縛るとか、人の事制限するとかするのかな……?せっかく、こんなに良い翅《モノ》があるのに……」
 それにキリトやリョウが答えるより早く、キリトの胸ポケットから飛びだしたユイが、それに答えた。

「ニンゲンは複雑と言うか……人を求める感情を表現するときわざわざ複雑化する理解できない部分がありますね」
 ユイの突然と登場に目を向いたリーファが驚いたような顔をして彼女の事を覗き込む。

「求める……?」
「他者を求める心が、人間の基本的な行動原則だと私は理解しています。故にそれは私のベースメントにもなっていますが、私なら……」
 ユイはキリトの頬に手を添えて、小さな音でキスをした。

「こうします。とてもシンプルですし、明確です」
 リーファが驚いた表情をしているのを眺めながら、リョウは考える。
ユイの言っている事は、おおむね正しい。人間に限らずだが、生物の基本的行動原則はそう言った感情に対する理解の有無を問わず、欲求という言葉によって単純化して表現出来る。植物にすら、そもそも生存すると言う事が擬人化した表現ならば生存欲求だと一応はあてはめることが出来るのだ。
唯この場合、問題とされているのは欲求云々よりもむしろ……

「人間界はもうちょっとややこしいところなんだよ。気安くそんなことしたら、ハラスメントコールでBANされちゃうよ」
 キリトが苦笑しながら言う。こういう事だ。人間の持つ、複雑化した脳から来る感情による倫理や歪曲した欲求。こういった物のせいで、人と人と言うのはユイが言ったほど単純にはならないようになってしまっている。

「ユイ坊。さっき言ったろ?
「手順と様式ですね。リョウ叔父さん」
「ウチの娘に妙な事を教えないでもらおうか……」
「おぉ、怖えぇ!」
 わざと大げさに飛び退るリョウを、キリトはジト目で睨む。リーファはと言うと、いまだにユイに驚いていた。

「す、すごいAIね……プライベートピクシーってみんなそうなの?」
「「いや、こいつが特に変なだけ」」
「酷いですぅ」
 ぷくぅ。と頬を膨らませて再びキリトの胸ポケットに飛びこんだユイを見て、三人は声を出して笑った。
笑いながら……リーファは遠くを見るような目線で再び空を仰ぐ。

「……まさかね」
「ん?どうした?」
「あ、ん、なんでもない!……さ、そろそろ
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