第六章 (1)
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、こけつまろびつ教室を飛び出した。
……僕はなんでいつもこうなのだ。肝心要のときに限って。あの時も、この時もそうだった…これまでの、大事な局面での悲惨な失敗が次々と脳裏を駆けめぐる。なんかもう泣きたい……。
これ以上ヨーデルが続くようなら、ノーパソ叩き壊してしまおうかとまで思いつめた瞬間、ふつり、とヨーデルが途切れた。
た、助かった……
荒い息をつきながら立ち止まる。…講義に戻れる空気じゃないから、手近な教室に入り込んで、ちょっと休むことにした。後ろ手にドアを閉めて、机にカバンを放り投げて一息ついた瞬間、ノーパソからすすり泣きが聞こえた。
「なんだよ今度は!」
乱暴にノーパソを開くと、ビアンキが画面の隅でうずくまって、すすり泣いていた。
「う……ウイルス……」
「えっ…いや、あの」
「……ウイルスですか……ぐす……」
セキュリティソフトなのにウイルス呼ばわりされたことで、プライドを傷つけられてひどく落ち込んでいる。…なんだ、この扱いにくいセキュリティソフトは……。泣きたいのはこっちだ!の一言をぐっと飲み込み、僕はつとめてやさしくビアンキに声をかけた。
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「…いや、それは…つい咄嗟にね…」
「どうせ私なんて…ウイルスですからっ……ぐすっ」
僕に背を向けて、壁紙をむしりながらいじけ始めた。うわ、ちょっとウイルスっぽい。
「そんなことないから、ね、機嫌直してよ、ビアンキ」
「ウイルスですからっ!こんなものっ!食べちゃいますからっ!!」
ビアンキは折角つくった3Dのオムライス画像を引っつかむと、もぐもぐしながら口の中に押し込み始めた。
「――だー!もうやめてよ!!ね、ほら、気持ちはとってもうれしいから!ね、僕はビアンキが怒ってると悲しくて泣きそうだよ!!」(別の理由で)
「……ほんとに?」
オムライスを戻すと、ちょこんと正座して僕に向き直り、首をかしげる……あぁもう、かわいいなぁ……。セキュリティソフトとしてはどうかと思うけど……
「うんうん、本当だよ!さっきは、みんなの前で音が鳴ったからびっくりしただけだよ」
「みんな、いたんですか?カメラに人が映ってなかった…」
あ、そうか…ノーパソを一瞬で閉じたから、ビアンキは周囲の様子がわからなかったんだ。
「……ごめんなさい……」
落ち着いたみたいだけど、まだ声が暗い。
「でも気持ちはうれしいからね。本当だよ」
「…ヨーデル食べ放題も、鼻歌からがんばって解析して、MP3の音源拾ってきたんです」
「うんうん、ありがとう。でもそれ違法だから、もうやっちゃだめだよ」
マウスで撫でてあげていると、少し機嫌が直ってきたのか、ビアンキはハンカチで軽く目をぬぐって顔を上げた。
「…あと、オムライス、柚木にも見てほしいです!」
「絶対
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