第五十話 帰郷その二十
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「あの戦争は勝てるとは思わなかったね」
「だよねえ」
「奇跡的な勝利だったよ」
「本当にね」
彼等から見てもだ。そうした戦争であったのだ。
「日本負けたら危なかったし」
「けれどしない訳にはいかなかったしね」
「それで皆悩みに悩んで」
「結果はじめた戦争だったね」
強硬派と言われることの多い山縣有朋ですらだ。最後の最後、開戦のその時までその戦争を躊躇っていたのだ。そうした戦争だったのだ。
「あの時の日本には天恵があったかな」
「天の意志がね」
「そうじゃないかって場面も多かったし」
「神様達がついてたのかな」
「僕達も応援してたけれど」
「あの戦争のことは覚えておるぞ」
その博士の言葉だ。
「わしはまだ子供だったからのう。あまり深くは考えられんかった」
「とてもだよね」
「そこまではね」
「子供だとね」
「しかし勝つと信じておった」
それでもだというのであった。
「必ずな。二次大戦は駄目かと思ったが」
「けれどあの戦争だってね」
「やっぱりするしかなかったよね」
「そうしないといけない状況だったし」
「あの時だって」
「あの戦争の頃わしはもう立派な歳じゃった」
博士はその戦争のこともよく覚えていた。
「あの時色々な兵器にも携わったわ」
「兵器の開発もしていたのか」
「あの時はそうじゃ」
こう牧村にも話す。
「そうしておった」
「それが俺のサイドカーにも活用されているのだろうな」
「左様、あの時の経験を活かしておる」
「やはりそうか」
「そういうことじゃ。主に航空機を作っておった」
「空か」
「車や船にも携わっておった」
つまりありとあらゆるものにである。戦えるもの全般であった。
「そうしておったぞ」
「博士も日本の為に働いていたか」
「当然のことじゃ」
それはむべもないといった感じの返答だった。
「わしは日本人じゃからな」
「それで僕達は日本の妖怪だよ」
「生まれも育ちもね」
「日本だよ」
「この国の産だよ」
妖怪達もそうだというのであった。
「それは否定できないよ」
「日本好きだしね」
「一番ね」
「わしも好きじゃ」
博士もであった。
「ずっと生きておるこの国がのう」
「俺もそうだな」
そしてそれはだ。牧村もであった。
「俺も我が国が好きだな」
「そうじゃろ。それが自然じゃ」
「自然か」
「日本は君の故郷じゃ」
博士は牧村にこう述べた。
「故郷は大事にせねばな」
「中には違う人間もいるがな」
こんなことも言う牧村だった。
「たまにな」
「政治家におるか」
「いるだろう。あのカメムシみたいな顔をした奴だ」
牧村は言葉に表情を出さないがそれでも微かに忌々しげなものを見せている。
「そのカ
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