第五十話 帰郷その十七
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「内臓があるのはわかったが」
「どういった構造で働いているのがですね」
「理解できない」
そうした意味での今の彼の言葉だった。
「実にな」
「まあそうじゃろうな」
博士は笑いながら彼に述べる。
「それは」
「生物学だけでは説明がつかないか」
「所詮学問なぞ一つ一つではそうじゃ」
博士はそこに学問の限界にさえ言及していた。
「一つ一つでは限度がある」
「限られているか」
「わかることも説明できることもじゃ」
そのどちらもだというのだ。
「しかしじゃ。それぞれの学問を重ねていけばじゃ」
「それが違ってくるか」
「左様」
牧村に対して頷いてみせた。
「そういうことじゃ」
「だから博士はか」
「生物学だけではない」
一つの分野だけではないというのだ。
「他の学問もな。しておるのじゃ」
「科学に医学もか」
「それと工学もじゃ」
理系について述べられていく。
「それと文系もな」
「この場合は民俗学だな」
「それと歴史学に文学もじゃ」
その二つであった。
「とにかく色々な学問を学ぶことじゃな」
「そうして多くのものを知っていくか」
「そうしなければ妖怪でも何でもじゃ」
妖怪だけに限らないという。他のものもだというのだ。
「わからんものじゃ」
「そうだよ。僕達妖怪ってね」
「生物学じゃ説明つかないからね」
「中々ね」
「というか生物学ってね」
「だよね」
妖怪達はその生物学についても話していく。どうだというのだ。
「所詮は今の時点での知識でしかないし」
「それ以上のものはないからね」
「だから僕達についてはね」
「全くわからないから」
「そういうことじゃ。学問は調べることじゃ」
まずはそこからだというのである。
「調べないとわからんものじゃからな」
「だから僕達のことだってね」
「調べないとわからないよ」
「全然ね」
「はっきり言って」
これが妖怪達の主張であった。言われてみればその通りだった。
そしてであった。またろく子が首を伸ばしてきて牧村に話す。
「私の首だってそうですよ」
「そういえばどうして伸びる」
「それは一切わかっていません」
にこりと笑ってだ。そうして話す彼女だった。
「実はそうなんです」
「全くか」
「はい、全くです」
何一つわかっていないとだ。彼女は話すのであった。
「私自身にもです」
「脊椎に関係があるのか」
牧村はここは今考えられるだけの知識で述べた。
「それでだろうか」
「どうでしょうか」
それはよくわからないといった感じの返答だった。
「果たして」
「脊椎の関係ではないのか」
「首の骨が伸びているという意識はありませんし」
それはないというのである。
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