第五十話 帰郷その十五
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「あいつか」
「ああ、妹さんね」
「そういえば牧村さんって妹さんと仲よかったよね」
「そうだったよね」
「それは非常に大きいのじゃ」
妖怪達が言う中でだ。博士はまた指摘してみせた。
「そこがじゃ」
「兄弟がか」
「親子と兄弟」
博士はこの二つの軸について話した。
「その二つと常に接しているとじゃ」
「そこが大きいか」
「うむ、大きい」
そうだというのである。
「人間でいる為にはな」
「それで俺はこうして今もか」
「人間でおるのは間違いないな。それに」
「それに?」
博士は言葉を変えてきた。牧村もそれに顔を向けた。
「それにとは」
「君にはもう一つあるな」
「もう一つか」
「友人と言っておくか」
博士はここではあえて多くは言わなかった。これだけに留めた。
「それでよいかのう」
「友人か」
「こう言えばわかるな」
また言う博士だった。
「そうじゃな」
「よくわかる。そうか」
それが若奈のことであるのは牧村もわかった。だが博士の気遣いに応えてだ。今は多くを言わなかった。これだけに留めたのである。
しかしだ。博士は話自体は続けた。そうしてであった。
「それじゃ。君のその友達じゃが」
「俺にとっては大きいか」
「非常に大きい」
そうだというのである。
「君をこれまで。妹さんと共にじゃ」
「支えてくれてきているか」
「おっと、そうじゃそうじゃ」
博士も牧村の言葉を受けて破顔してだ。言葉を訂正したのだった。
「今もじゃったな」
「そうだな。それはな」
「そしてこれからもじゃな」
現在だけでなく未来も話すのだった。
「そういうことじゃな」
「そうなるな。話は」
「うむ。とにかく君はじゃ」
「特にその二人によってか」
「人間でいているのじゃよ」
暖かい目になってだ。牧村に話した。
「そういうことじゃ」
「俺は一人ではない」
「孤独だと思ったことはないじゃろ」
「ないな」
実際にその通りだった。
「それはな」
「よいことじゃ」
「孤独はそれだけで不幸になるか」
「人によるがな」
「俺の場合はだな」
「だから魔物になっておった」
そうだったというのである。
「危ないところじゃった」
「しかし俺は孤独ではなかった」
「だからよかったのじゃ」
こう話すのだった。
「君は家族も友人もいて」
「そしてだな」
「わし等もおる」
最後は自分達だという博士であった。
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