第七話 九階その七
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「かなりなんてものじゃなくね」
「ユダヤ教の奥義か」
「ラビでもないとわからないんじゃないかな」
こうも言う眼鏡であった。
「これは流石にね」
「ラビか」
「そうだよ」
ユダヤ教の聖職者である。言うまでもなくユダヤ系の社会においてその社会的地位は指導者としてかなりのものになっている。
「それもかなり高位のね」
「あの博士でもわからないか」
「あの博士!?ああ」
「あの人かよ」
二人にもその博士が誰なのかすぐにわかった。
「悪魔博士ね」
「あの人だよな」
「博士ならわかるだろうか」
牧村は真剣な顔で呟く。
「カバラのことも」
「ひょっとしたらかな」
眼鏡のここでの言葉はあまり歯切れのいいものではなかった。
「あの人のことよくわからないからね」
「確か政治学者なんだろ?」
金髪は博士をこう考えていた。
「法学の博士号持ってたしな」
「あれ、お医者さんじゃなかったっけ」
眼鏡は博士についてこう言った。
「外科の権威だよね」
「どちらの博士号もあるらしい」
その二人に牧村が答える。
「どちらもな」
「へえ、そうだったのか」
「何個か博士号を持ってるっていうのは聞いていたけれど」
「だからどちらも正しい。それに文学博士でもある」
「とにかく何でも持ってるんだな」
「じゃあひょっとしたら」
「知っている可能性はあるな」
こう言うと本を閉じた。
「とりあえず話を聞いてみるか」
「何かあの博士はな」
「そうだよね」
ここで二人は苦笑いで顔を見合わせて話し合った。
「近寄りにくいところがあるよな」
「何かね。すっごくね」
「そうなのか」
「だってよ。あんな外見だぜ」
「百歳だったっけ」
二人は牧村に対しても言った。
「仙人か何かに見えるしよ」
「通称が通称だし」
「悪魔博士か」
学園内であまりにも有名になっている博士の通称だ。とにかくまともな人間とは思われていないのだ。半ば本気で仙人と噂されているのだ。
「それだな」
「ああ、それだよ」
「悪魔学?」
普通は話されない学問の名前が出て来た。
「そんな分野の学問があるらしいね」
「そうらしいな」
牧村も眼鏡に言葉を返す。
「それはな」
「悪魔についてのあれだよね」
「怪しいなんてものじゃないぞ」
また眼鏡と金髪が言う。
「そんなおかしな学問があるなんて」
「一体何を勉強するんだろうな」
「まあとにかく」
眼鏡がまた言った。
「天使と悪魔は裏返しの存在だしね」
「表裏一体か」
牧村はここで悪魔について考えるのだった。
「天使と悪魔は」
「ほら、天使が神に反逆して地獄に落とされて」
「神曲か」
牧村はそれを聞いて述べた。
「ダンテだったな」
「地の
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