第五十話 帰郷その十
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「二人を見ればな」
「ふむ。勘は相変わらずじゃな」
「しかし。よく見れば」
その子泣き爺と砂かけ婆を見ての言葉である。
「怪しいな」
「怪しいと」
「わし等がか」
「よく見ればそうだ」
にこりともせずだ。こう述べたのである。
「わかるな」
「ううむ、よく見ればか」
「わかるものなのじゃな」
「他の面々よりはましだが」
他の面々とはだ。鬼やから傘や塗り壁といった面々である。
「一つ目小僧もだな」
「あれっ、僕もなんだ」
「その目ではまずいだろう」
こう彼に言う。
「そのままの姿で出ていればだ。誰でも怪しく思う」
「そうかなあ。目が一つだけじゃない」
「その一つ目がだ」
問題だと返す牧村だった。
「問題だ」
「まあ昔から言われてたけれどね。これで驚かせて喜んでるし」
「確信犯か」
「そうなるね。まあ僕も普段は術で化けてるよ」
「それで大丈夫か」
「大丈夫だよ。そういうことだから」
「それでか」
「そういうことだよ。それでね」
さらに話す二人だった。そしてだ。
あらためてだ。こんなことも言う一つ目小僧だった。
「僕もアパートの一室で暮らしてるけれどね」
「僕と一緒にね」
「おいどんも同居してるばい」
河童と一旦木綿も出て来た。
「仲良く暮らしてるから」
「そうしているからね」
「それはいいことだな」
牧村もそれはよしとした。そしてだった。
あらためてだ。アップルパイについて話すのであった。
「ではもう一つだが」
「はい、アップルティーもですね」
「どちらも貰いたい」
こう言うのであった。
「それではな」
「はい、それじゃあ」
ろく子はまたその二つを牧村に渡す。そうしてなのだった。
彼はそのアップルパイとアップルティーを楽しんだのだった。そこに博士も戻ってきた。博士は研究室に入るなりこう言ったのであった。
「ふむ、林檎じゃな」
「そうだよ、アップルパイ」
「それにアップルティーね」
妖怪達が博士に対して話す。
「美味しいよ」
「とてもね」
「それは何よりじゃ」
その二つを聞いてだ。博士は明るい笑顔になった。
その笑顔のまま自分の机に座るとだ。その前にアップルパイとアップルティーが出される。当然秘書でもあるろく子が置いたのであった。
「どうぞ」
「済まんのう」
笑顔でその彼女に述べる。
「それでは有り難くな」
「はい、それでは」
彼女の言葉を受けてからそのアップルパイとアップルティーを食べる。その二つを飲み食いしながらだ。牧村に対して話すのだった。
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