第五十話 帰郷その三
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「そういうのよりもカレーやハヤシライスとかの方が好きなのよ」
「ハヤシライスか」
「そうそう、今晩はハヤシライスだから」
夕食の話もされた。
「あんた、それも食べるわよね」
「ハヤシライスも好きだ」
それもだと答える牧村だった。
「そうか。それか」
「とりあえずお昼はどうするの?」
母はあらためて我が子に問うた。
「オムライスでいいわよね」
「是非な」
靴をその玄関の脇に置きながら。母に対して答えた。
「それを頼む」
「特大オムライスにコンソメスープもあるから」
「スープもか」
「昨日の残りだけれどいいわよね」
「有り難いな」
牧村は率直に述べた。母に対して言いながら自分の部屋に戻る。
「それではだな」
「じゃあね。その組み合わせでいいわね」
「頼む。それで」
「そうね。後あんた学校は?」
話がそちらに移った。
「何時からなの?」
「明日からだ」
その時からだというのである。
「学校は明日からだ」
「そう、わかったわ」
「明日からまた登校する」
「それじゃあ今日はゆっくりしなさい」
背中から聞こえる母の言葉は優しいものだった。
「いいわね、それじゃあ」
「そうさせてもらうか」
「けれどトレーニングはするわね」
「絶対にな」
「じゃあそれをやってゆっくりしなさい」
二階の自分の部屋への階段を登る我が子にまた告げる。
「心を休めなさい。いいわね」
「そうさせてもらうか」
そんな話をしてだ。彼はまずは自分の部屋で休んだ。それから暫くして呼ばれてだ。一階のリビングに来てそれでだ。母と二人でそのオムライスとコンソメスープを食べるのだった。
オムライスはオレンジライスを黄色いオムレツで包みそこに赤いケチャップをかけている。そしてコンソメの中にはスライスした人参に玉葱、キャベツ、それにベーコンが入っていた。それを見ながらだった。
牧村はだ。こう母に話した。
「いい感じだな」
「そうでしょ。何でも食べるからにはね」
「食べるからには」
「美味しくてしかも栄養がないとね」
その二つが両立してこそだというのである。
「意味がないからね」
「そのどちらもだな」
「それはお母さんが言ってる通りよ」
母はにこりと笑ってまた祖母の話をした。
「和食でも洋食でもね」
「どちらでもか」
「そうよ。どちらでもね」
こう話すのだった。
「というかどの料理でもよ」
「同じことか」
「その通りよ」
「味覚と栄養か」
「その両立よ」
母は話していく。
「そうなるのよ」
「では、だな」
「食べなさい」
母は穏やかな声で息子に話した。
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