第五十話 帰郷その二
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「大きな心の鍛錬になるよ」
「持ち方次第か」
「そうよ。こんな言葉があるよ」
祖母は言葉を続けてきた。
「健康な精神は健康な肉体に宿るかし」
「その言葉か」
「宿って欲しいってあるね」
祖母が指摘するのはこの点だった。
「そういうことだよ」
「意識してすればなるか」
「うん、そうだよ」
「成程な。身体だけでなく心もか」
また言う牧村だった。
「そういうことか」
「だから神戸でも頑張るんだよ」
「わかった」
牧村は祖母のその言葉に対してしっかりとした口調で頷いてみせた。
「それではな」
「それでだが」
祖父の言葉である。
「帰る前にだ」
「帰る前にか」
「食べていくといい」
「朝御飯用意してあるよ」
こう孫に話す。朝食があるというのである。
「どうだ、それは」
「食べていくかい?」
「途中でパンでも買って済ますつもりだった」
実際にそう考えていた彼だった。しかしそれがここで変わった。
二人の言葉にだ。こう答えたのである。
「だが。それでは」
「食べていくといい」
「たんとね」
「有り難う」
牧村の言葉だ。
「それではだ。この朝食を」
「うむ、食べるといい」
「それじゃあね」
こうして彼は祖母の作ったその最高の朝食を食べた。それを食べ終わってからそのうえで神戸に戻る。懐かしい我が家に戻るとだ。
「ああ、おかえり」
「只今」
母は今下校してきたように息子に返した。彼もそれに素っ気無く応える。
「今帰ってきた」
「おやつあるわよ」
「おやつか」
「っていってもお昼ね」
母はここでふと言う。今二人は家の玄関にいるのだ。
「それじゃあ」
「昼食か」
「オムライスよ」
昼食はそれだというのだ。
「今から作るつもりだったけれどね。御飯もかなりあるし」
「オムライスか」
「あんた好きよね」
息子に対してこのことも尋ねる。
「そうよね」
「好きだ」
息子は母の言葉に対し玄関にあがりながら述べた。
「そうか。オムライスか」
「お母さんオムライスは作らないわよね」
「そういえばそうだったな」
言われて気付いたことだ。祖母はそうしたものは作らなかった。牧村は母のことばからはじめてそのことに気付いたのであった。
「オムライスや炒飯はな」
「お母さんは御飯のお料理作らないのよ」
「そうだったのか」
「お粥や雑炊は好きだけれどね」
「しかしオムライスは、か」
「それと炒飯もね」
そちらもだというのだ。
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