第四十九話 停戦その二十
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「それでだ」
「それを今から見せよう」
「見せる?」
「例え外がどれだけ強かろうが」
「中はどうだ」
これが二人のここでの言葉だった。
「それを今から見てやろう」
「そうさせてもらう」
「!?これは」
そしてだった。この瞬間だった。
神の動きが止まった。そしてだ。
その身体から何かが噴き出した。まずは紅蓮の炎だった。
次に氷だった。岩も出る。雷もまた。ありとあらゆるものが神の青い身体を引き裂いてそこから勢いよく飛び出てきたのであった。
「なっ、これって」
「そうだ、中だ」
「中を攻める」
二人で驚く神に告げる。
「それが今のだ」
「私達の選んだ戦術だ」
「そうだね。僕のこの液は」
その青い液のことに他ならない。
「全てを溶かすよ」
「そうだな。最強の矛であり」
「最強の盾だな」
「うん」
その通りだというのである。
「僕のそれはね」
「一見矛盾だ」
「しかしだ」
どうかというのだった。この場合は。
「その矛と盾が一つになればだ」
「その定理は崩れる」
「そうさ。矛と盾が一緒になっているから」
それを神自身も認める。
「だからだよ」
「その矛と盾はどうにもならない」
「何をしてもだ」
二人もそれをわかってのことだというのである。
「しかしその中はだ」
「違う」
そこはだというのだ。
「ならばその中を攻めればだ」
「貴様を倒せると見てだ」
「正解だよ」
神もまたそれを認める。その間も身体中からあらゆるものを出していく。それはまさに彼の敗北、即ち死に他ならないものであった。
その死の中でだ。彼は言うのだった。
「それはね」
「それではだな」
「認めるな」
「僕の負けだよ」
それを自分から認めた彼だった。
「見事だよ、本当にね」
「それならばだな」
「これから」
「お別れだね」
いささか残念そうだが彼は言った。
「これでね」
「それではだな」
「死ぬといい」
「面白かったよ」
赤い炎と青い炎が彼の身体を包みだしていた。
「本当にね」
「この戦いはか」
「それだけか」
「うん、とてもね」
声は笑っていた。弾んでさえいる。
「だから。それじゃあね」
「死ぬか」
「今から」
「さよなら」
実に気軽な返答だった。
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