第四十九話 停戦その十五
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「それはな」
「じゃあはじめようか」
目玉からだった。ここでも。
「早速ね」
「そうだな。それではな」
「はじめるとしよう」
こう言うとであった。すると。
異様な匂いがしてきた。それは。
「臭いね」
「そうだな」
目玉も死神もそれぞれ言い合う程だった。そこまでの悪臭だった。
「何だ、この匂いは」
「今まで嗅いだこともない位臭いけれど」
「強いな」
そして牧村も言う。
「凄まじい刺激臭だ」
「この匂いはだ」
だが男は平気だった。それだけの匂いの中にいてもだ。
そのむせかえす耐えられないまでの、信じ難いまでの刺激臭の中でだ。男は言葉を続ける。その匂いが何かと話すのであった。
「神の匂いだ」
「その神か」
「今度の神か」
「そうだ、その神だ」
こう牧村と死神にも返すのだった。
「今度の神の匂いだ」
「あのさ」
目玉が嫌な声で男に問うた。
「これってないじゃない」
「何がない」
「だからこの匂いだよ」
彼が今言うことはやはりこれであった。
「そんなさ。むかつく匂いって」
「いいものだとは思わないか」
「全然」
それはすぐに否定した目玉だった。
「そんなの思う筈ないじゃない」
「そうか」
「そうかじゃなくてね」
「話はそれだけだ。匂いに関してはな」
「これはどうしようもないんだね」
「匂いを消したければだ」
どうするか。男が言うとだった。
彼の後ろに犬がいた。だがただの犬ではなかった。
青い脳漿を思わせるいやらしい粘り気のある液体を全身から滴らせ舌が注射針を思わせる針になっている。それを見ると明らかに犬ではなかった。
そしてだ。男も言ってきた。
「ティンダロスだ」
「それがその神の名だな」
「そうだ。ティンタロスの猟犬」
男は牧村にこう返した。
「これがこの神の名だ」
「猟犬か」
「混沌の世界の猟の神だ」
そうだというのである。
「話は聞いたな」
「確かにな。しかし」
「しかしか」
「聞いたのは名前だけだ。それではだ」
「戦うか」
「如何にも。来い」
牧村からの言葉だった。
「その犬を倒してやろう」
「犬か」
その猟犬からの言葉だった。そしてだ。
鋭い声でだ。こう牧村と死神に言ってきたのだった。
「僕が犬ね」
「少なくとも外見はそうだな」
「違うか」
「それはその通りだよ。ねえ叔父さん」
男に顔を向けての言葉だった。言葉を出す度にその口からも青い液が滴り落ちる。そこから刺激臭が立ちこめていた。そこからだった。
「この三人だね」
「そうだ」
男は己を叔父と呼ぶその神に対して述べた。
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