ALO編
六十一話 瞳開かず──
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ばかりの対価を要求したって良いとは思わないかい?」
そう言ってから今度は急に声が冷淡になり、まるで命じるように和人に告げた。
「キミがこの娘と何を約束したかは知らないがね、今後此処にはいっさい来ないでほしいね。結城家との接触も、遠慮してもらおうか」
その言葉に、和人が堅く拳を握りしめるのを見て、涼人は気付かれないよう一歩だけ前に出た。そんなことは流石にしないだろうが、もしも和人が須郷に殴り掛ろうとしたら、殴る前に止めるためだ。
「式来月この病室で行うからね。一応キミも呼んでやるよ。それじゃ、まぁ精々最後の別れを惜しんでくれたまえ。勇者キリトクン」
その言葉を最後に、今にも吹き出しそうな嘲笑を抑える様な表情で須郷は身をひるがえし、和人の肩をポンっと叩くと、病室から出て行った。涼人は完全に無視された。
後には、うなだれた和人と、涼人だけが残される。
「…………」
「…………」
涼人は少ししたい事が有ったため、鞄を背負い、扉の方へと歩き出す。今の和人に声をかける事は、流石の涼人にもためらわれた。
────
「……須郷さん!」
「んん?」
廊下の途中で須郷に、涼人は息を乱しながら追いつき、須郷は怪訝そうな顔で振り向く。
「あぁ、君か。涼人くん。だったね?」
周囲の眼が有るからか、先程とは打って変わった糸目のまま此方に微笑みかける。
「えぇ。すみません。少しお聞きしたい事があって……」
「おや、何かな?あぁ、結婚式への招待なら、新婦の友人としてなら和人君と同じ扱いで席を設けようか?」
「あははは……有りがたいお話ですけど、そうでは無いんです。その……ご迷惑なのは承知の上なのですが、何しろレクトの主任研究員の方とお話できる機会なんて滅多に無いので……どうか、二、三お聞きしても構いませんか?」
涼人もまた、可能な限り真面目そうな青年という印象を付ける様な誠心誠意の態度を持って接する。それがよかったのか、須郷は少し困った様に笑いながらも……
「うーん、僕も忙しいからねぇ……歩きながらでも、構わないかな?」
「勿論!ありがとうございます!」
そうして、涼人と須郷は並んで歩きだす。
「それで、何かな?」
並んで歩きながら、涼人は可能な限りの笑顔を作る。
質問は、一つ一つだ。
「はい。その……須郷さんは、現在のSAOサーバーの維持責任者でいらっしゃるんですよね?」
「うん。まぁそうだね」
「なら……」
「SAOの意識不明プレイヤー達に付いて、何かご存じな事は無いですか?」
須郷の眉が、ピクリと動いた。
「と言うと?」
「いえ、その……もしかしたら、維持責任者の方なら意識の無いプレイヤーたちが、“どうなっているか”とか、“何故目覚めないか”に付いて
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