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SAO─戦士達の物語
ALO編
六十一話 瞳開かず──
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。予想していたとはいえ、若干ながらも衝撃を受ける。しかし涼人以上に衝撃を受けたのは、当然と言うか和人で、その言葉を聞いた瞬間、目を見開いたままだった表情が完全に凍りついた。
その表情を見た途端に、須郷の表情が楽しげに歪むのが、涼人からでも分かる。

『……にゃろう』
「そんな事……出来る訳が……」
 涼人が内心悪態を突くのと同時に和人からようやくと言った様子に絞り出された言葉は、須郷の表情を余計に歪ませるだけだった。

「確かに、この状態では本人の意思確認が取れないから法的には入籍出来ないんだけどね。書類上は、僕が結城家の養子に入る事になる。……まぁ実のところを言うと、この娘は昔から僕の事を嫌っていてねぇ……親達はそれを知らないけど、いざ結婚となったら間違いなく拒絶されるだろうと思っていた」
 要は、結城家に入る事がこの男の目的なのだろう。書類上だろうがなんだろうが、あの家と縁を持てばそれだけで莫大な資金援助を得られるコネが出来る。しかしそれには、明日奈に拒絶される事は非常に都合が悪い。だから……

「だから、この状況は僕にとってはとても都合が良いんだ。当分眠っていてほしい物だね」
『こいつ……!?……ッ』
 そう言った須郷の眼を見て、涼人は驚愕した。須郷の瞳にある一つの感情が浮かんでいたからだ。しかしその思考を……

「やめろっ!」
 和人の怒鳴り声がさえぎる。
話しながらアスナの頬を這い、遂にその唇に触れようとした須郷の手首を、和人が掴んでいた。
表情が完全に強張った状態のまま、和人は須郷を睨みつける。

「あんた、明日奈の昏睡状態を利用する気か……」
「利用?馬鹿言っちゃいけない。これは正当な権利だよ桐ヶ谷クン」
 再びあの酷薄な笑いを浮かべつつ、須郷は和人の手を振り払う。

「キミ、SAOを開発した《アーガス》がその後どうなったか知っているかい?」
「解散したと聞いた」
「うん。ゲームそのものの開発費に加えて事件の保障のお陰で莫大な負債を抱え、会社は消滅。じゃあ、その後SAOサーバの意地を任されたのは、何処だか知っているかな?」
「レクト、フルダイブ技術研究部門ですね」
 その問いに答えたのは、涼人だった。相変わらずの礼儀正しい態度を崩さないまま答えた涼人を見た須郷は一瞬驚いたようだったが、すぐに歪んだ笑みを戻す。

「英雄クンの方は少しは調べてるみたいじゃないか。感心感心。じゃ、そこの主任研究員は?」
「今の話の流れから察するに──」
「そ。僕だよ」
 満足そうに、笑う須郷に正直な所涼人は寒気がしたが、決して顔には出さずに微笑し続ける。
再び和人の方を向き直りその顔を突きだすと、言い聞かせるようにゆっくりと話す

「つまり、明日奈のこの命は今や僕が維持している様な物だ。なら、少し
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