ALO編
六十一話 瞳開かず──
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ると首を傾げ、それに和人が反応する。
「あ、えっと、この人は俺の従兄弟で……」
「初めまして。桐ヶ谷涼人と言います」
少し慌てた様子だった和人は慣れた様子で完璧な角度のお辞儀を見せた涼人に目を向く。
その声は落ち着き払っていて、和人が初めて彰三と向き合った時に有った緊張や物怖じが、まったく無かった。
彰三氏が少し驚いたように、しかしすぐさま笑顔で返す。
「そうか。君が……初めまして。アスナの父の結城彰三だ。名刺が無くてすまないね」
「僕の方こそ娘さんの部屋に結城さんの許可も得ず……申し訳ありません」
『僕ぅ!?』
有り得ない一人称に、和人の方が一瞬驚く。目を向くのを必死にこらえるが、少し顔が引きつるのが分かった。
「君にはアスナも世話になったと聞いているよ……すまないな。遠いところを」
「いえ。和人の事も有りますし、それほど大した距離でもありませんから」
『めんどくさがってはいただろ』
確かに此処に来るまで、涼人はゆっくりではあるものの息も乱していなかったし、大した距離で無いと言うのは事実なのだろうがそれにしても……大した猫かぶりだ
「そうか……ありがとう」
そう言った彰三氏は、アスナの枕元に近寄りその頭をそっと撫でる。
しばし家をきつく閉じ、何処か葛藤する様な表情を見せたが、すぐにその手は離された。それを見て居た和人もまた、痛みをこらえるように顔を歪める。
故に……それに気付いたのは涼人だけだった。彰三氏の後ろに居た細身で長身の若い男の眼が、歪むような笑みを浮かべたように見えたのだ。
『……ッ』
しかしその表情は一瞬で元の糸目を常に笑顔にした様な顔に戻る。見間違いかと涼人が思った時、彰三氏から彼の説明が入った。
「彼とは初めてだね……ウチの研究所で主任研究員をしている須郷君だ」
「よろしく、須郷伸之《すごうのぶゆき》です。そうか君達があの……英雄と勇者の……」
その言葉を聞いて、涼人は若干頬が引きつるのを感じた。英雄に勇者?何だそれは。
層こう思っている内に、須郷氏は涼人に握手を求め、続けて和人にも同じ動作で握手を求める。
「……桐ヶ谷和人です」
「桐ヶ谷涼人と言います。よろしく」
名乗った直後に和人の顔を見ると、和人は彰三氏の方をちらりとうかがっていた。成程。
『話しやがったな……しかも何で俺の……』
恐らく、和人はSAO内での事を、彰三氏に話してしまったのだろう。さしずめ、消される事を恐れず行動したキリトは“勇者”、それを倒し、あの世界を終わらせたリョウコウは“英雄”と言う訳だ。
本人で有る涼人にしてみればあんなのはただの“無謀”と“偶然”なのだが。
案の定、少し首を縮めた彰三氏は小さく笑って、
「いやぁ……すまん。余りにもドラマティッ
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