空白期(無印〜A's)
第二十三話 裏 後 (アリサ、すずか)
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熱いような気がしたが、慣れてくれるとその温度も気持ちよく感じられた。
「はぁ、気持ちいいわね」
いつも忙しそうで、疲れているはずの母親も温泉が気持ちいのか、ゆったりと蕩けるような表情をしている。梓を挟んだ向こう側にはすずかもいるが、彼女も気持ちいのだろうか、ゆったりと力を抜いて、ふぅ、と息を吐いて、目の前の自分が綺麗と絶賛した風景を見ていた。
アリサ、梓、すずかと無言で並んで温泉に浸かる。傍から見れば、自分達は親子―――すずかとアリサは姉妹に見えるだろうか、とアリサは考えた。いや、どちらかというと梓とすずかは親子に見えるかもしれないが、アリサは余所の子と思われるかもしれない、と思ってしまった。すずかと梓は黒髪に対して、アリサは金髪という決定的な違いがあるからだ。梓の夫が金髪と知らなければ、梓とアリサが親子と思われることはないだろう。
もっとも、それはアリサが内心で、自分の容姿―――金髪と白い肌に対してコンプレックスのようなものを持っているだけであり、よく見れば、アリサと梓は顔のつくりがよく似ていることが分かる。金髪と肌の色を除けば、間違いなくアリサは梓の娘だった。それにアリサ自身が気づくことはできないが。
そんな暗い感情がアリサの胸の中に漂い始めたのを感じて、それを払拭するようにアリサはばしゃばしゃと顔を洗って、その感情を洗い流した。そんな感情は小学校に入る前にとうに克服したはずだからだ。今、再び起き上がってきたのは、きっと不安だった時期から、再び元に戻ろうと期待しているからだ。
暗い感情を顔を洗うことで、すっかり洗い流したアリサの目に不意に梓の胸が目に入った。大きく膨らんだ梓の胸が、だ。続いて自分の胸に目を落としてみる。次にすずか。二人ともストンという擬音が似合うようにまったく膨らみなどなかった。年齢を考えれば当然なのだが、アリサからしてみれば、梓もすずかもアリサも性別で言えば『女』なのに、どうして違うのか? と気になるところだ。
そんなアリサの視線に気づいたのだろうか、梓が悪戯っぽい笑みを浮かべて、アリサに話しかけた。
「胸が気になるの?」
コクリ、と頷くアリサ。その言葉に釣られて、すずかも気になったのか、梓の胸を凝視していた。ペタペタと自分の胸を触ってみても、そこには何もない。そんな二人を見て梓は面白いものを見るように笑っていた。
「二人とも心配しなくても大きくなったら、自然と胸も大きくなるわよ」
あははは、と笑いながら梓は隣に座っていたアリサを抱き寄せる。急に抱き寄せられたものだから、アリサはバランスを崩し、お湯が少しだけ口の中に入ってしまったが、現状はそれどころではなかった。抱き寄せられたアリサは、肌を合わせる形で梓の胸に触れているわけだが、それが自分のものと違って非
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