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リリカルってなんですか?
空白期(無印〜A's)
第二十三話 裏 後 (アリサ、すずか)
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けた。アリサと違って不幸だったのは、出るタイミングが少しずれたのか、すずかが翔太とアリサの二人を見失ってしまったことだ。しかしながら、日付も変わろうという時間。こんな時間に子どもが行ける場所は限られている。

 遊技場は当然アウト。温泉に道具を持っていくはずがない。ならば、場所は外しかなかった。

 外に出たすずかは、まるで空に浮かぶ月に誘われるようにまっすぐ中庭への道を歩いていた。夜の一族の血が活性化しているのだろうか、外に出たすずかは、普段なら聞こえない遠くの声も聞こえ、普通の人間なら見えない暗闇でさえ、猫のようにはっきりと見る事ができるようになっていた。

 最初は、池があるほうの中庭へと行こうとしたのだが、そちらには大人が多すぎる。一方で、もう一つの中庭には人の気配が殆どなかった。ならば、向かったのはそっちだろう、とすずかは当たりをつけて、また歩みを続ける。やや歩くとすぐに目的としていた中庭へと出る事ができた。

 ぐるりと周囲を見渡すと足元を照らすような少しの明かりと片手で数えられるほどのベンチしかない。簡素な中庭だった。そんな中、その数少ないベンチに座る男女。いや、背の低さから言えば、男の子と女の子というべきだろうか。普通なら見えないかもしれないが、夜の一族としての彼女の目は確かに夜でもはえる金髪と整った顔立ちを持つ横顔を視界に捕らえていた。

 彼らを見つけられた事が嬉しくて、すぐに駆け寄ろうとしたすずかだったが、なんだか二人の空気がおかしいことに遠目からでも分かった。どうしたんだろう? と思わず足を止めてしまったが、すぐに状況が動き出す。

 不意にアリサが目を瞑って上を向いたのだ。まるで、何かを望むように。その『何か』をすずかは知っていた。彼女が読む小説の中でも時折出てくる表現。

 ―――え? キス?

 そう、まるでアリサの仕草は翔太にキスをねだっているようにしか見えなかった。このとき、すずかはアリサの年齢のことなど既に忘れていた。驚きのあまり足を止めてしまったすずかだったが、すぐに再び動き出すことにある。ただし、それは踵を返し、もと来た道を戻ることになるのだが。

 その契機は、翔太がアリサのキスをねだるような仕草に応えるように顔を近づけ始めるのを見てしまったからだ。

 これから、先を予想して。これから先が見たくなくて。だから、すずかは目の前の光景から逃げ出すように。目の前の光景を否定するように。その場から動くために足を動かしたのだった。

 部屋に戻ったすずかは、すぐに布団にもぐりこむ。夜の一族としての身体能力のおかげだろうか、汗一つかかず、短い時間で戻ってくることができた。布団を頭の上まで被りながらすずかは先ほどの光景を否定する。

 ―――ショウくんとアリサちゃんが……キス?

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