空白期(無印〜A's)
第二十三話 裏 後 (アリサ、すずか)
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って息するんだろう? どんな感触がするのかな? やっぱり柔らかいのかな?
色々なことを想像するアリサ。だが、次にアリサを襲った感覚は、期待したような柔らかい唇の感触ではなく、おでこに感じた痛みだった。
「いたっ!」
思わず声を上げ、痛みが襲った部分を両手で押さえる。こんなことをするのは、この場には当然一人しかない。隣に座っていたはずの翔太だけだ。アリサは翔太を攻めるような視線を向けるが、翔太は悪びれた様子は一切なかった。それどころか、どこか苦笑するような時折みせる大人びた笑みを浮かべていた。
「ダメだよ。試すようなことでそんなに簡単にそんなことしちゃ。そういうのは、もう少し大きくなって、アリサちゃんが本当に好きになった男の子にやらないと。ファーストキスは女の子にとって大切なものなのだから」
ベンチから、降りた翔太が、アリサの前に立って、諭すような柔らかいような声で言う。話の内容はよく分からなかったが。
本当に好きも何も、その感情が分からないのだから仕方ない。しかし、そういえば、似たような事が漫画や小説にも書いてあったような気がする。その『ふぁーすときす』というのは聞き覚えがあったからだ。まあ、翔太が言うのだからそうなのだろう、と長年の付き合いの中で積みあがった信頼の元、翔太の言葉を信じることにするアリサ。
「さあ、帰ろう。風邪引いちゃうよ」
一足先に下りた翔太が手を差し出してくる。翔太が自ら手を差し出してくるのは珍しい。いつもは照れて、滅多に手を繋ごうということはないのに。だから、そのもの珍しさに笑みが浮かび上がってきて、「そうね、帰りましょう」という言葉と共にアリサは翔太の手を取った。
翔太に手を引かれながら部屋に戻る途中で考える。
果たして、自分が『好き』という意味を理解する日が来るのだろうか。それが、アリサにとっては楽しみなような、不安なような、くすぐったような複雑な感情で。さりとて、それは遠く未来のことかもしれなくて。だから、どんなふうになるのかアリサには分からなかった。
ただ、いま一つだけ確かなことは、繋がれた右手から感じる温もりは確かなものであるということだけだった。
◇ ◇ ◇
月村すずかは、夜の一族としての能力を全開にしながら、自分に与えられた部屋へと戻っていた。まるで、今まで見てきた光景を振り払うように。
すずかが目を覚ましたのは偶然ではない。彼女の血に宿る夜の一族としての特性だ。夜の一族というだけに夜の気配には敏感になる。特にアリサと翔太の二人が少しだけ時間を置いて両者とも外に出て行けば、気づかないはずがない。
―――お散歩かな?
そう思って、少しだけ時間を置いてからすずかも部屋を出て、後を追いか
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