空白期(無印〜A's)
第二十三話 裏 後 (アリサ、すずか)
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りも若干、騒がしいほうがきっと思い出に残るだろう。刹那にしか見る事ができないはずの景色を完全に夕日が沈むまでの間、三人は無言でお風呂に浸かるのだった。
◇ ◇ ◇
アリサ・バニングスの心臓はまるで壊れるのではないだろうか、と思うほどに高鳴っていた。原因は言わなくても分かる。先ほど見た光景だ。
今の時刻は、月が南中しそうな時間。すでに全員が布団にもぐりこみ、寝入っているはずの時間。だが、それにも関わらず、隣の布団がごそごそと動き出し、がらっという音と共に次に外に出て行くような音がした。トイレだろうか、と思ったが、部屋にトイレはあるので外に出る理由が分からない。
気になってアリサはすぐさま隣の布団の持ち主―――翔太の跡を追う。
急いだのが幸いだったのだろうか。彼の姿は簡単に見つける事ができた。本当なら、声をかければいいのだろうが、こんな夜中に何所に行くのだろうか? という興味のほうが勝ってしまい、結局、探偵のように彼の後を追うことにした。
黙々と時折、案内板に目を向けて彼が向かったのはこの旅館が有する中庭だった。アリサがパンフレットを見たときも旅館の中庭についても書いていたが、何か面白いものがあったのだろうか? と思い出しながら変わらず、彼の後を追うアリサ。
しかし、中庭について思い出す前に中庭についてしまったアリサは、そこで思いがけないものを目にしてしまった。
空に浮かぶ月を写した水面。ベンチの下に淡くともされた光。その光に照らされた男女。二人の顔の距離はゼロと言っていい。彼らの唇は重なっているのだから。しかも、彼らは二人の世界に入っているのだろうか。アリサに気づいた様子はなかった。
思わず、足を止めてしまうアリサ。彼女が、彼らの行為を理解するのに数秒が必要だった。ちなみに、彼女が追ってきた翔太は、その光景を目にすると一瞬、足を止めたが、すぐに踵を返して別の場所に向かっているようだった。思考回路が停止していながらも、少しだけ動いていた思考回路で、さすがだ、と翔太を褒めながら、ようやく再起動を果たし、全力で動くようになった思考回路で彼らの行為を理解したアリサは、顔を真っ赤にしながら、その場から逃げ出した。おそらく、翔太が向かった方向に向けて。
ドクンドクンとありえない速度で鼓動を刻む心臓を押さえながら、何所をどう歩いたか分からないが、とりあえず開けた場所に着いた。そこは、先ほどの中庭のような場所で、されども池はない。雑草と石畳があるだけだ。
そこに設置されたベンチの一つにアリサの探し人が居た。
ベンチの背もたれに体重を預け、顔は月を見ているのだろうか上を向いている。しかし、その表情はいつもの笑みを浮かべておらず、珍しくぼぅとしているような表情だっ
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