ALO編
六十話 桐ケ谷家の朝
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り言って何言ってんのかさっぱり分からない。と言うか基本的に剣道の試合は見て居ても、言い放たれた言葉より結果で技を判断する方がよっぽど早い。しかしその迫力ある胴も、僅かに身を引いた相手方(というかステップから見て明らかに和人/キリト)に鮮やかに避けられる。
打ち込んでいる方は間違いなく直葉だろうが、全中ベストエイトの直葉の打突を和人は全て見えて居ると言わんばかりにかわしまくる。
『つーか見えてんな』
まああちらの世界では毎日のようにあのレベルかそれ以上の攻撃を相手にして来たのだ。
直葉の打突は確かに早いが、正直言えば見えるのは当たり前だし、見えさえすれば避けるのは容易と言うものである。
『やっぱ眼はあっちのままか』
涼人にも直葉の竹刀の動きは事如く見えて居る。成程、あちらの世界での経験も、決して此方の世界で役に立たないと言う訳ではないのかもしれない。
しかしそれでも、限界は有る。
「やあああぁぁッ!!」
直葉がキリトに一気に突撃し、竹刀を強制的に鍔迫り合いに持ち込んだ。そのまま足腰の地かあらで勝る直葉が思い切りキリトを押しこみ、その勢いに圧倒されたキリトの身体がぐらりとバランスを崩す。そこへ……
「めえぇぇぇぇん!!!」
直葉の強烈な面が、和人の頭を強打した。
面あり、一本。
これが限界だ。幾ら見えて居て、軽い力で身体をずらして攻撃をかわす事は出来ていても、いざ此方から攻撃というのが出来ない。純粋な力で劣る以上下手に押しこむことは不可能だし、かといってシステムアシストが無い以上ソードスキルは使えず、まして敏捷値や筋力値と言うった数値的戦闘能力も無いため身体能力は皆無。キリトの他を圧倒する身体反応速度も、身体が脳について行かないのでは何の意味も無い。
あくまでも、今の涼人達はただの人間なのだ。
ふらついた和人に直葉が駆け寄った所で、試合は終わった。
────
「お見事だな。流石だぜスグ」
「あ、りょう兄ちゃん」
「なんだよ、りょう兄見てたのか」
「途中からな」
笑いながら二人に歩み寄ると、二人の顔が此方を向いた。まぁ防具ごしなので顔は見えないのだが……
「ほれ、朝飯だぞ、防具解け」
「あ、うん」
「おう」
取りあえず二人に防具を解き、食卓に付くよう促した、その時だった。和人が突然竹刀を左右にひゅんひゅんと振り、背中に戻す動作をしたのだ。それはあの世界において、剣士キリトが戦闘後に行っていたのとまったく同じものだったが、当然そこに本来納刀されるべき鞘は無いし、何も知らない直葉から見れば完全に不審者か厨二病患者だ。案の定、頭打ったとか言って心配する直葉に、和人が必死に弁解している。
「それにしても……びっくりしたよ?お兄ちゃん何時の間に練習してたのよ」
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