ALO編
六十話 桐ケ谷家の朝
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れかけた食パンが残っていた事を思い出す。
「……偶にはフレンチトーストでも作ってみっか?」
「あ、りょう兄おはよう……」
「おうカズ。おはようさーん」
タマゴと牛乳、バターを出そうとした所で、後ろからまた声がした。和人である。まだ寝むそうで、少々ぼーっとしているのが分かる。
「スグは……朝稽古か」
「その通り……ほれっ。これでも差し入れるついでに外の空気当って目ぇ覚ましてこい」
言いつつ、和人にミネラルウォーターのミニボトルを投げ渡す。和人が「ふぁーい」とか何とか言いながら、庭へと向かって行ったのを見送ってから、リョウは台所に向き直った。
「んじゃやるか」
牛乳と卵の混ぜ物……卵液を適当に切ったパンに適当に付けて……両面をバターを引いたフライパンで焼く。完成。
「さて、んじゃ呼びますかね」
一応今の工程で三人分作るのに適当に時間が立ったため、従兄妹二人を呼ぶために庭に出る。が……
「あいつら何処行った?」
庭に二人の姿が無い。不審に思って地面を見た所で、どういう事か気が付いた。
下が母屋の裏に向かって足跡を刻んでいる所を見るに、恐らくは裏手の剣道場に行ったのだろう。
小さなものではあるが、やたらと敷地の広い桐ヶ谷家には母屋の東側に剣道場がある。なぜそんな物があるかと言うと、和人、直葉、涼人の祖父がこの家を建てる時にほっ建て、そのまま遺言で取り壊すなと言われていたからだ。
元々、その祖父はやたらと厳しい非常に昔堅気な人物で、自身も警察官であり、若い頃は剣道家だった事もあり、息子である峰嵩氏に同じ道を歩む事を期待したのだそうだ。
しかし峰嵩氏はあっさりと外資系の企業に就職、結婚後も海外を飛び回る日々が続いたため、自動的に祖父の情熱は涼人達孫に向けられてしまった。
涼人はおろか、和人、直葉さえも幼少の頃は強制的に剣道場に通わされそうになったがしかし、実際に続いたのは直葉だけだ。
和人は二年で剣道場をやめ、涼人に至っては続いたのは約一月だけだった。やめる際に涼人は散々祖父に殴られそうになったが、その殆どを涼人は逃げ回り、最終的には母が祖父を何とか説き伏せてそのまま剣道からは離れっぱなし。竹刀にも殆ど触れて居ない。
まぁここつい二ヶ月ほど前までは殆ど本物の刀剣類に触れて居た訳だが。
「ったく、あの爺さんのおかげで後が面倒になったんだよな……」
小さくそんな事を呟きながら涼人は置いてあった外履に履き替え、剣道場の扉を開く……と、そこは試合の真っ最中だった。
「てぇぇぇッ!!」
裂帛の気合と共に打ち出された小手がもう相手の手頸へと吸い込まれ……しかし命中するよりも少々早く相手方が身体を捻って的をずらす。
「でぁぉぉぉッ!」
恐らく「胴」と言っているのだろうが、はっき
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