空白期(無印〜A's)
第二十三話 裏 前 (アルフ、デビット、なのは)
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アちゃん」
そして、包み込むように肩に手を回すと胸に抱き寄せる。もう片方の手ではアリシアの長い金髪を撫でていた。そんな翔太の母親の手が気持ちよかったのだろうか。日向ぼっこする猫のように目を細めた後、アリシアは独り言のようにポツリとつぶやいた。
「お兄ちゃんは、ちゃんと帰ってくるかな?」
これはまた、異なことを聞くものだ、とアルフは思った。翔太にとってここは、帰って来るべき『家』であるはずだ。彼がこの家以外の何所に帰ってくるのだろうか。それは翔太の母親も同様のことを思ったのだろう。少しびっくりしたような顔をしていた。しかし、すぐにふっ、と優しい顔になると、優しく言い聞かせるような声でアリシアに言う。
「大丈夫よ。ショウちゃんはちゃんと帰ってくるわよ」
「ほんとう?」
いつもなら、すぐに信じてしまうはずの翔太の母親の言葉。だが、初めてアリシアは、彼女の言葉を聞き返した。アルフは、それに驚いたものだが、翔太の母親はそれに動じることなく、笑顔で、ええ、と断じて、だって―――と続ける。
「この家には、私も、お父さんも、秋人も、アルフさんも、そして―――アリシアちゃんもいるんだもの。ショウちゃんが帰ってこないはずがないわ」
その語りかけるような声は果たしてアリシアに届いたのだろうか。おそらく、届いたのだろう。うん、と小さく頷くのがアルフにも見えたから。それを確認した翔太の母親は、うん、と頷くとアリシアの頭を二、三回、ぽんぽんと優しく叩くと、だったら、と続けて口を開いた。
「アリシアちゃんが、そんな悲しい顔をしていたら、ショウちゃんも悲しくなるわ。ショウちゃんがいなくても楽しくいきましょう」
「うんっ!」
泣いていた烏がなんとら、というヤツだろうか。アリシアの表情からは、悲壮に満ちた表情は鳴りを潜め、今は満面の笑みが浮かんでいた。やはり、母親は偉大だ、とアルフが思うのはおそらく間違っていないだろう。
「それにしても、アリシアちゃんはショウちゃんが大好きなのね」
「うんっ! だって、お兄ちゃんは私を受け入れてくれたもん。妹だって言ってくれたもん」
そう、と受け止める翔太の母親の顔は愛おしいものを見るように優しい微笑だった。
アルフは、アリシアの言葉にようやく、アリシアが翔太に懐いていたことに納得した。
そうだ。そうだったのだ。アリシア―――フェイトは、すべてを否定された。母親だったプレシアによって。フェイトという存在を否定されたのだ。だからこそ、今のアリシアという仮面を被ったフェイトが生まれたのだが。それさえも、否定されたとき、最初にすべてを受け止めたのは、受け入れたのは確かに翔太だった。それは、一種の刷り込みのようなもの、というべきなのだろうか。アルフにはいまい
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