空白期(無印〜A's)
第二十三話 後
[13/14]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
もしかしたら、男のほうがロマンチストというから、僕がそう思って欲しいと思っているのかもしれないが。
だが、僕の言葉に意外とバツの悪そうな顔をして、ごめんなさい、と蚊の泣くような声でアリサちゃんは謝罪の言葉を口にする。
僕としては、そこまで攻めたつもりはないのだが。自分を大切にして欲しいと思っただけで。だが、謝るほどに反省してくれたなら僕としては満足だった。だから、その場の空気を取り払うように僕は笑顔で手を差し出した。
「さあ、帰ろう。風邪引いちゃうよ」
いくら春とはいえ、夜の空気はまだ肌寒い。上着を羽織っているとはいえ、長時間いれば、風邪を引いてしまうかもしれない。ゴールデンウィークの旅行が、風邪で閉められるのもいかがなものだろうか。だから、もうそろそろ帰ろうと思った。手を差し出したのは、淡い光しかなく、足元が危ういからだ。
「そうね、帰りましょう」
差し出した手をアリサちゃんは、笑顔で取るのだった。
◇ ◇ ◇
次の日、僕たちは、鮫島さんが運転する車で海鳴の街へと帰っていた。
昨日の夜は散歩した効果が出たのか、部屋に帰って、すぐに寝る事ができた。もっとも、それでも寝る時間が遅かったのか、少し寝坊してしまったが。アリサちゃんにも影響が出てしまい、今朝は昨日の朝よりも手ごわかった。しかも、よほど眠かったのか、今も僕の隣で寝ている。車の揺れというのは眠りを誘うものだから仕方ない。ただ、僕の肩を枕代わりにするのはやめて欲しいものだが。デビットさんたちにも笑われるし。しかし、起こすのも忍びなく、そもそもの原因は僕にあるため、追い払うこともできなかった。
「ねえ、ショウくん、昨日の夜、アリサちゃんとどこかに行った?」
不意にすずかちゃんが、アリサちゃんを起こさないように小声で僕に尋ねてくる。
「うん、寝付けなかったから少し散歩にね。少しお話をして帰って来たけどね」
気づいていたんだ、と僕が言うと、どうやら僕たちが帰って来たときに物音で起きたらしい。もっとも、眠たくて、その場で追求することはやめたようだが。
「私も誘ってくれたらよかったのに」
不満そうな顔で言うすずかちゃん。やはり仲間はずれは悲しいものがあるのだろう。しかし、あの時は、アリサちゃんもすずかちゃんも眠っていると思っていたのだ。僕の勝手で起こすのは忍びなかったし。
次に何かをするときは絶対にすずかちゃんも誘うことを半ば無理矢理に約束させられてしまった。
その後は、海鳴に帰るまで小声でずっとすずかちゃんと温泉旅行の思い出や、最近話していなかった新刊についてなどについて会話を続けていた。時折、何か寝言のように言うアリサちゃんの表情を観察しながら。
車で移動す
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ