空白期(無印〜A's)
第二十三話 後
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を壊すためにアリサちゃんの質問に答えた。半分正しく、半分嘘ではあるが。
蔵元翔太としての経験はないが、前世ともなれば、話は別である。女の子との交際経験がまったくなかったわけではない。もっとも、今となっては、子どものような付き合い方だったが。高校時代だから仕方ないだろう。
「そうなんだ」
僕の答えにそうやって受け答えた後、やや考えるような仕草をして、アリサちゃんは意地悪っぽい笑みを浮かべて口を開く。
「ねえ、チュウってどんな感じなのかしら?」
試してみない? と笑みを浮かべて後にアリサちゃんは目を瞑って、顎を上げる。中々、堂に入った仕草だ。
突然すぎる展開に思わずうろたえてしまった僕だが、すぐに気を取り直した。これが、同世代だった女性にやられれば、ドキドキするだろうが、如何せん、彼女は小学生だ。例えば、少しませた子どもが、知識を仕入れてきたようなものだ。生憎ながら、小学生に迫られて興奮するような性癖は持っていない。
さて、しかしながら、アリサちゃんの態度をどう取るかが問題だ。パターンは二つ。
一つは、本当に興味から試している場合。小学校三年生といえば、少しずつではあるが、異性への興味が出てくるものだ。男であれば、女性の胸に興味を持ったりするようなものだ。特に女の子の場合、男よりも心の成長が早いから、アリサちゃんもそういうことに興味があるのかもしれない。
そして、もう一つは、全部を理解している場合だ。キスの意味も何もかもを、だ。
もっとも、どちらの場合にしても、僕の対応としては変わらないのだが。
僕は、アリサちゃんの顔に自分の顔を近づけるようなことはなく、代わりに少しだけ体を寄せ、同時に親指で押さえた中指を彼女の額に近づける。少し重心を前にかけながら、中指の射程圏内に右手が入って、少しの間、中指に力を溜めて、親指による支えを外す。力をこめた中指は、親指による支えがなくなり、力を解き放つように跳ね、アリサちゃんの額を直撃した。
パチン、という心地よい音がアリサちゃんの額から響いた。
「いたっ!」
反射的に痛みがした額を両手で押さえるアリサちゃん。閉じられていた目はすっかり見開かれていた。よほど痛かったのか、半分ほど涙目になりながら、何するのよっ! と言わんばかりに僕を睨みつけていた。
しかし、悪いのはアリサちゃんだ。だから、僕はその彼女の睨みつけを意に返さず、よっ、と座っていたベンチを降りながら言う。
「ダメだよ。試すようなことでそんなに簡単にそんなことしちゃ。そういうのは、もう少し大きくなって、アリサちゃんが本当に好きになった男の子にやらないと。ファーストキスは女の子にとって大切なものなのだから」
少なくとも男である僕はそう思っている。
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