空白期(無印〜A's)
第二十三話 前
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るのだから無関係の赤の他人とは思われないだろうが、しかしながら、親子というには肌の色が違いすぎる。デビットさんは白人なので、アリサちゃんと同じく白い肌だった。背後から近づいてきたため、少ししか見えなかったが、体つきは男としては十分に鍛えられたといっていいほどの肉体だった。細身である親父よりも男らしいというべきだろう。どちらかというと、デビットさんの体つきに憧れてしまうのは、僕が男の子だからだろう。
「さっきはありがとうございました」
僕とデビットさんの間の静寂を破ったのは僕のお礼の言葉からだった。
先ほどのアリサちゃんからの誘いに助け舟を出してくれたデビットさんには、お礼を言っておかなければならないと思ったからだ。もしも、あそこでデビットさんが助け舟を出さなければ、僕は今頃、女湯で目を瞑りながら湯船に浸かっていただろう。アリシアちゃんのことから考えても、僕の意思が弱いのは分かっているからだ。だからこそ、僕はデビットさんにお礼が言いたかった。
僕のお礼に対してデビットさんは、驚いたように目を丸くするとすぐに声を出して笑い出した。
「はははは、そんなことか。いや、あれは、私の勝手もあったんだよ」
そこまで言うと、デビットさんはまっすぐ僕の目を見て、真剣な表情で告げる。
「ありがとう」
先ほど僕がデビットさんに告げた言葉。それを今度はデビットさんが僕に告げていた。しかしながら、僕にはデビットさんが僕にお礼を言う理由を見出せない。僕が怪訝な顔をしているのが分かったのか、デビットさんはさらに補足のために言葉を続けた。
「アリサのことだよ。あの子のことについて、私は君にお礼を言おうと思っていたんだ」
アリサちゃんについて僕にお礼? 僕がアリサちゃんに何か特別なことをした記憶は特になかった。
「あの子と友達になってくれて、ありがとうと言いたかったんだ」
「それは、お礼を言われることではありませんよ」
そんなことで、お礼を言われるいわれはない。いや、むしろ友達になったことで、お礼を言われるべきではないと思う。なぜなら、友達になることは一方的な享受ではないからだ。お互いに望むことによって友達は成り立つのだから。だから、デビットさんがお礼を言うのであれば、僕もアリサちゃんにお礼を言うべきだろう。友達になってくれてありがとう、と。
だが、僕の言葉にデビットさんは首を振っていた。
「君にとってはそうかもしれない。だが、あの子の親として、私は君にお礼を言いたい。いや、君のような子どもがいることに、かな」
そういうと、デビットさんはもはや逢う魔が時というのは少し遅い時間となり、暁が二割、夜空が八割の空を見上げながら思い出すような表情をしながら言う。
「あの子は私の血が
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